内記稔夫

内記稔夫は、1937年9月23日に東京で生まれ、2012年6月1日に74歳で生涯を閉じました。彼は日本の漫画蒐集家として知られ、現代マンガ図書館の設立者としてもその名を刻んでいます。

幼少期、小学5年生の時に手塚治虫の『ロストワールド』を読んだことがきっかけで、漫画の世界に深く魅了されました。その情熱は漫画家を志すほどに高まり、中学時代には少年誌への投稿で入選を果たすなど、その才能を早くから開花させました。しかし、漫画家としての道を進む代わりに、彼は漫画を「集める」という別の形で漫画の世界に関わり続けることになります。

1955年、高校3年生の時、内記は貸本屋「山吹文庫」を開業しました。この貸本屋の蔵書が、後の現代マンガ図書館の基礎となります。1978年、内記は長年の夢であった「現代マンガ図書館」を設立し、館長に就任しました。図書館運営には私財を投じ、新旧の漫画を精力的に収集することで、他に類を見ない専門図書館へと発展させました。彼の漫画への愛情と情熱は、図書館の充実ぶりからも窺い知ることができます。

内記の漫画文化への貢献は、図書館運営に留まりません。1997年には、現代マンガ図書館の設立と運営における功績が認められ、第一回手塚治虫文化賞特別賞を受賞しました。この受賞は、彼の漫画文化への貢献を広く世に知らしめることとなりました。

さらに、1995年からは全国貸本組合連合会理事長、2001年からは日本マンガ学会理事を務め、学会の設立と発展にも大きく貢献しました。また、米沢嘉博記念図書館の創立・運営にも協力するなど、漫画文化の発展に尽力しました。晩年には、東京国際マンガ図書館（仮称）設立のため、現代マンガ図書館の蔵書約18万点を明治大学に寄贈し、その運営にも携わりました。

2012年6月1日、肺炎のため東京で亡くなりました。彼の訃報に際し、漫画評論家の夏目房之介は、内記の人柄を「江戸っ子らしい気風の素敵な方だった」と評し、漫画史研究会での彼の分け隔てない態度や、若者にも気さくに接する人柄を偲びました。

内記稔夫は、著書も残しており、『マンガの教科書 - マンガの歴史がわかる60話』では、漫画の歴史について詳細な解説を行っています。また、「日本における漫画の保存と利用」という論文も発表し、漫画文化の保存と利用についても深く考察しています。

内記稔夫の生涯は、漫画への深い愛情と情熱に満ちたものでした。彼の設立した現代マンガ図書館は、今もなお多くの人々に利用され、漫画文化の発展に貢献し続けています。

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