円興寺

円興寺：歴史と自然が織りなす岐阜の古刹

岐阜県大垣市青墓町に位置する円興寺は、天台宗に属する由緒ある寺院です。篠尾山を背に、静かに佇むその姿は、古都の歴史と自然の息吹を肌で感じさせてくれます。本尊は木造聖観音菩薩立像で、国の重要文化財に指定されている荘厳な仏像です。平安時代中期に作られたと推定され、その優美な造形は見る者を魅了します。寺伝では最澄の作と伝えられており、空海が黄金仏を刻んで安置したという逸話も残されています。このことから、本尊は「石上観音」とも呼ばれ、人々の信仰を集めてきました。

円興寺の創建は、790年（延暦9年）に最澄が開山したと伝えられています。美濃国不破郡青墓の大炊氏からの懇願により建立されたとされる歴史を持ちます。しかしながら、1574年（天正2年）、織田信長による兵火により、円興寺は全てを焼失するという悲劇に見舞われました。その際、本尊の聖観音像は不思議なことに、自力で石の上に移動し、難を逃れたと伝えられています。この奇跡的な出来事が、人々の信仰をさらに深めることとなりました。

焼失後、円興寺は現在の地に移転し、1658年（万治元年）に再興されました。かつては山頂にあったとされる円興寺の旧跡地には、礎石や源朝長の墓、源義朝・源義平の供養塔などが残されており、歴史の重みを感じさせます。現在の円興寺境内には、源朝長の位牌をはじめとする、彼にまつわる遺品も大切に保管されています。これらの遺品は、円興寺の歴史と、源氏一族との深い関わりを物語る貴重な資料となっています。

円興寺は、西美濃三十三霊場第三十二札場にもなっていることから、多くの巡礼者も訪れる信仰の場となっています。境内は、紅葉の名所としても知られ、飛騨・美濃紅葉三十三選にも選ばれています。秋には、鮮やかな紅葉が境内を彩り、訪れる人々を癒やします。

アクセスは、東海道本線（美濃赤坂線）美濃赤坂駅から約3km、または大垣駅から名阪近鉄バスを利用することができます。大垣駅からは「赤坂総合センター」行き、「池田温泉」行きなど、いくつかのバス路線があります。静寂に包まれた境内では、歴史と自然の織りなす独特の雰囲気の中で、心穏やかなひとときを過ごすことができるでしょう。

円興寺は、単なる寺院という枠を超え、歴史、信仰、自然が一体となった岐阜を代表する文化的景観と言えるでしょう。その歴史的価値と、四季折々の美しい自然は、多くの人々を惹きつけ、今もなお人々の心を掴んで離しません。

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