円行 (藤沢市)

円行（えんぎょう）

概要

神奈川県藤沢市の北部に位置する「円行」は、現在の行政区分としては円行一丁目、円行二丁目、および大字円行に分かれています。これらの区域では、現代的な住居表示に関する法律に基づく街区符号や住居番号は導入されていません。

地域の中央を南に向かって引地川が流れており、その流域は、下流にあたる石川や大庭地区と同様に、相模野台地が侵食されて形成された典型的な谷戸（やと）地形が広がっています。

円行地区は、藤沢市北部の主要な工業拠点である桐原工業団地やいすゞ自動車藤沢工場と、近年急速に発展した都市機能と住宅が集まる湘南台地区の間に位置しています。地域内では、西側が準工業地域として利用される一方、東側は湘南台に続く形で住宅地や商業地として開発が進んでおり、多様な景観を見せています。

地名と歴史

「円行」という地名は、かつてこの地に存在した「円行寺」という仏教寺院に由来すると伝えられています。この円行寺は、南北朝時代に小字梅田（現在の湘南台四丁目付近）に建立されたとされ、現在は座間市に移転し「円教寺」として存続していると考えられています。

歴史的に見ると、円行の全域は古くから相模国高座郡に属しており、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて成立した広大な渋谷荘の一部でした。この時期は、この地の有力な武士団であった渋谷氏の支配を受けていたと推測されています。

戦国時代の終焉期、豊臣秀吉による小田原征伐が行われた1590年（天正18年）に発行された制札には、「シホヤノ庄圓行郷」という地名が確認でき、この頃には「円行郷」として認識されていたことがわかります。江戸時代に入ると、『新編相模国風土記稿』にも「圓行村」として記録されています。当時の領主は大久保忠保、地頭は石川大膳らでした。

明治維新後の廃藩置県を経て、円行村は周辺の亀井野、石川、西俣野、今田、下土棚の五ヶ村と合併し、六会村の一部となりました。昭和に入り、六会村が藤沢市に合併された後、円行地区は大きな変遷を遂げます。

特に、藤沢市北部の発展に伴って実施された土地区画整理事業は、地域の姿を大きく変えました。「北部第一土地区画整理事業」により、引地川の東岸にあたる区域が整備され、「湘南台」として円行から分離しました。その一方で、「北部第二（一地区）土地区画整理事業」によって現在の円行一丁目、二丁目が整備され、成立しました。また、藤沢市北部の工業集積地である桐原工業団地の造成に伴い、円行の西側の一部が「桐原町」として分離しています。

興味深いことに、歴史的な円行の範囲は現在の湘南台の一部を含んでいたため、「円行公園」や「円行八幡宮」といった円行の名を冠する施設の中には、住所が湘南台になっているものがあります。その一方で、湘南台が藤沢市北部の中心地域として発展した影響から、住所は円行でありながらも、湘南台の名を施設名に冠する例が多く見られます。

地理と自然

地域の中央を縦断する引地川は、かつてこの円行地区を流れる区間が「円行川」とも呼ばれていました。また、引地川の支流である不動川も当地を流れています。

経済

円行地区における住宅地の地価は、2023年（令和5年）1月1日時点の公示地価によれば、円行字滝之沢の地点で1平方メートルあたり17万7000円となっています。地域の産業構造としては、西部が準工業地域、東部が商業・住宅地という特性を反映しており、経済センサスなどでも様々な業種の事業所が確認されています。

交通

円行地区内に鉄道路線はありませんが、最も近い鉄道駅として小田急江ノ島線の湘南台駅があり、地域の重要な交通結節点となっています。地域内には神奈川中央交通によるバス路線が運行されており、湘南台駅をはじめとする周辺地域へのアクセスを担っています。

主要な道路としては、神奈川県道403号菖蒲沢戸塚線が地域を横断しています。また、都市計画道路として石川下土棚線と土棚石川線が整備されています。引地川などにかかる橋梁として、円行大橋、円行新橋、湘南台大橋、横須賀水道管橋などがあります。

主な施設

円行地区およびその周辺には、住民生活や教育、商業に関わる様々な施設が集まっています。

公共施設: 藤沢北警察署、円行市民の家、中丸公園、藤沢市まちづくり協会ビルなど。
教育機関: 多摩大学湘南キャンパス、神奈川県立湘南台高等学校、ときわぎ保育園分園など。
商業施設: 湘南Sマート、コープかながわ湘南台店、ケイヨーデイツー湘南台店、イエローハット湘南台店、ノジマ湘南台店、ワークマン藤沢円行店など、多様な店舗が点在しています。
史跡: かつての円行寺の関連地とされる圓行山青雲寺跡（廃寺）など。

その他

円行地区の郵便番号は252-0805で、集配業務は藤沢北郵便局が担当しています。歴史的な背景から、かつての六会村や、地名の由来とされる円教寺（座間市）なども、円行を知る上で関連深い事項と言えます。

このように円行は、歴史的な谷戸地形の中に、工業、住宅、商業といった多様な機能が混在し、周辺の主要拠点である湘南台や桐原工業団地との関係の中で発展を続ける地域です。

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