冒険ロックバット

冒険ロックバット：1975年の5分間特撮番組

1975年3月31日から同年9月27日まで、フジテレビ系列にて放送された『冒険ロックバット』。ピー・プロダクション製作による特撮番組で、月曜日から土曜日まで毎日5分間という短い放送時間ながら、全156話という長編シリーズとして展開されました。カラー作品です。

動物たちが暮らす平和な世界と、悪の影

舞台となるのは、動物たちが平和に暮らす「どうぶつ国」の「どうぶつ村」。しかし、この平和な村に、悪の黒雲「ワルジャン」とその手先である「ドラダヌギー」が、次々と悪事を働こうとします。

平和を守るヒーローロボット、ロックバットとブレイザー

どうぶつ国の平和を守るため、科学者「ズク博士」は2体のロボット、「ロックバット」と「ブレイザー」を開発しました。主人公のロックバットはおっちょこちょいでおしゃべりな性格。毎回、事件解決に挑みますが、失敗も多く、弟ロボットであるブレイザーに助けられる場面も少なくありません。ブレイザーはロックバットをはるかに凌ぐ怪力を持つものの、言葉を話すことはできません。

ロックバットのトレードマークは、成功時には舌をペロッと出す「ヘッヘェ！」、失敗時には泣き顔で「トホホォ！」と表現するリアル画アニメーション。この独特な演出も、作品の魅力の一つでした。

低予算を創意工夫で克服

制作予算は、1話あたり約20万円（当時）と非常に限られていました。しかし、制作スタッフは、この予算不足を創意工夫で克服しました。

例えば、ズク博士の研究所やフライングマンションの発進口などのセットは、廃業した元銭湯の映画館を安く借りて製作。スクリーンに雑誌や近未来的な風景のスチール写真を投影することで、ロケの手間を省きました。また、「どうぶつ国」の屋外撮影には、廃園となった遊園地を無許可で使用。遊園地のカラフルな設備を効果的に活用することで、セットを組んでいるかのような映像を作り出しています。

撮影は2日間で5本まとめて行われることもあったそうで、脚本もスタッフが共同で執筆するなど、制作体制も独特でした。しかし、スタッフたちは撮影を楽しみながら作品を作り上げていったようです。

個性的なキャラクターたち

登場人物は、すべて等身大のぬいぐるみで演じられました。動物たちは頭部のみが被り物で、胴体は俳優が衣装を着て演じています。ロックバットやドラダヌギーなどの表情は、リアル画を使った動画で表現されました。

主要キャラクターのデザインは全てうしおそうじ氏によるもの。

ロックバット: コウモリをイメージした主人公ロボット。胸の6つのボタンで6通りの超能力を発揮します。
ブレイザー: ズク博士が作ったもう一つのロボット。「鉄のプリンス」の異名を持ち、ロックバットを助けます。
ドラダヌギー: ワルジャンの手先で、タヌキをモチーフにしたキャラクター。
ズク博士: ロックバットとブレイザーを作った科学者。フライングマンションに住んでいます。
ミミーちゃん: ズク博士の孫娘で、秘書兼助手。
その他: リィー（リス）、ホースター（馬）、ワンブル探偵（犬）、ブータレ記者（豚）など、個性豊かな動物キャラクターが登場します。

スタッフと主題歌

『冒険ロックバット』は、うしおそうじ氏の原作を基に、多くのスタッフの努力によって制作されました。主題歌「冒険ロックバット」と挿入歌「鉄のプリンス・ブレイザー」は、水木一郎さんとコロムビアゆりかご会によって歌われました。

放送終了とその後

『冒険ロックバット』は、フジテレビの子供向け帯番組枠の最後を飾る作品となりました。放送終了後、ピープロの撮影スタッフは解散し、しばらく新作が作られませんでした。また、東南アジアからの引き合いがあったものの、低価格を理由に輸出が実現しなかったという逸話も残されています。

ソフト化とコミカライズ

『冒険ロックバット』は、現在では『快傑ライオン丸』などのBlu-ray BOXの特典映像として一部エピソードがソフト化されているのみです。また、講談社の『テレビマガジン』でコミカライズもされています。

低予算ながらも、高い創意工夫と個性的なキャラクターで多くの視聴者を魅了した『冒険ロックバット』。5分間の短い尺の中に凝縮された、特撮の魅力が詰まった作品と言えるでしょう。

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