冠状静脈洞

冠状静脈洞について

冠状静脈洞（かんじょうじょうみゃくどう）は、英語で "coronary sinus" と呼ばれる心臓の主要な静脈の一つです。この静脈洞は、心臓内で脱酸素血の還流を担い、右心房に血液を送る役割を果たしています。冠状静脈洞は、心臓の後面に位置し、左心房と左心室の間から始まります。ここでは、その構造や経路、機能について詳しく説明します。

構造と起始

冠状静脈洞は、心臓の後面において左心房と左心室の間に位置しています。この静脈洞は、大心臓静脈と左心房斜静脈が合流するところから始まり、その起始点はVieussens弁という特徴的な位置にあります。この弁は大心臓静脈が終わる地点に存在し、冠状静脈洞の認識の手がかりとなります。

経路と終末

冠状静脈洞は心臓の後面の左房室間溝を横断し、静脈は右心房に接続する際に大きく拡張し、その直径は最大で12mmに達します。血液は冠状静脈洞の開口部から右心房内で排出され、この開口部は右心房の後下部にあり、下大静脈の開口部のすぐ内側左側に位置しています。この部分には通常、薄い三日月形のテベシウス弁が存在し、右心房への血液の流入をコントロールしています。

分枝

冠状静脈洞は、様々な静脈から血液を受け取ります。主に、小心臓静脈、中心臓静脈、大心臓静脈、マーシャル静脈といった血管が関連しています。特に注目すべきは、大心臓静脈が前室間溝を上方に走り冠状静脈洞を形成する点です。その他にも、左辺縁静脈や左後心室静脈などがその流入に寄与しています。すべての静脈は、冠状静脈洞と接合する部位に弁を持つことが一般的です。

微細解剖と機能

冠状静脈洞そのものの壁は部分的に筋肉質で構成されており、この構造は動的調整に寄与しています。この静脈洞は、心臓の血液供給の約55%の静脈還流を担い、交感神経と副交感神経両方の支配を受けています。

技術的には、冠状静脈洞に電極を挿入し、心臓の電気生理学的情報を得ることが可能で、この手法は冠状静脈洞心電図と呼ばれています。また、冠状静脈洞は右心房と直接つながっており、肺高血圧症などによる右心房圧の上昇に伴い拡張することがあります。この拡張は、左上大静脈遺残や特定の先天性心疾患とも関係があります。

臨床的な重要性

心臓再同期療法（CRT）においては、リードを冠状静脈系に挿入することが求められますが、解剖学的な構造は個々に大きな違いがあり、専門医はその評価を行う必要があります。また、人工心肺を用いた開心術では、心筋保護液がこの静脈洞から逆行して注入されるため、注入が正常に行われているかを評価することが重要です。

冠状静脈洞は、心臓の重要な構造であり、その理解は心臓病の診断や治療において欠かせない要素です。

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