冨田正一
冨田 正一（とみた しょういち、1936年1月1日生）は、日本の元アイスホッケー選手。ポジションはゴールキーパー。
東京都中央区京橋にて、ふすま紙や表具資材を扱う問屋を営む家に生まれた。学童疎開を経験し、小学校の6年間で5つの学校を転々とした。少年時代は柔道やテニスに親しみ、講道館にも通っていたが、中学3年生の時にスウェーデン出身のアイスホッケー選手、スベン・ヨハンソンと出会ったことを契機に、明治高校のアイスホッケー部練習に参加するようになった。高校入学後に正式に入部し、当時の日本では希望者が少なかったゴールキーパーのポジションを自ら志願した。
明治大学に進学後もアイスホッケー部に所属。当時、実業団チームが少なかった日本では、大学がアイスホッケーの主要な舞台であり、特に明治大学、立教大学、早稲田大学、慶應義塾大学、法政大学などが強豪として知られていた。明治大学には、アイスホッケーが盛んな北海道（苫小牧、釧路）、青森県（青森、八戸）、栃木県（日光）などから有望な選手が集まっており、練習環境は厳しかった。当初はパック拾いなどの雑用が多く、一流選手の練習後、ゴールキーパー防具を借りてわずか15分程度しか練習できない状況であった。しかし、冨田は実家があった京橋から駿河台の大学までバスケットシューズで通学するなど、自己流で下半身強化や反射神経、状況判断能力を高めるトレーニングを考案し、練習時間の少なさを補った。大学の同期には、後にスコーバレーオリンピック日本代表となる村野正夫がいた。大学3年次の終盤から、試合に出場できるようになった。
大学卒業後、当時の日本代表監督であった河渕務が率いる岩倉組に入社。東京出身であることから、当初は入社に難色を示されたとされるが、全日本アイスホッケー選手権での活躍が認められ、入社に至った。家業を継ぐことが前提だったため、岩倉組には3シーズン限定の約束で入社したが、社長秘書としての業務も兼務し、企業経営の経験を積む機会を得た。選手としては、岩倉組で4シーズンプレーした。
全日本代表にも選出され、1960年のスコーバレーオリンピック、1962年の世界選手権に出場した。スコーバレーオリンピックへは、横浜港から貨客船「氷川丸」に乗船し、約2週間かけてカナダのバンクーバーに渡り、そこからバスと鉄道を乗り継いでオンタリオ州へ移動するという長旅を経て臨んだ。大会ではグループリーグでカナダ、スウェーデンには敗れたものの、フィンランドと引き分け、順位決定戦でオーストラリアに勝利して7位となった。1962年にアメリカ合衆国のデンバーで開催された世界選手権は、東ドイツに加えソビエト連邦、チェコスロバキアが不参加となる異例の大会となったが、日本はBグループで優勝を果たした。この際、フェアプレー賞としてロレックスの時計を贈られている。
岩倉組での選手生活を終えた後、冨田は29歳で家業である冨田商店に戻り、先進国のインテリア装飾ビジネスを学んだ後、31歳で社長を継いだ。
現役引退後、冨田はスポーツ界の運営に深く関わるようになる。1973年には日本アイスホッケー連盟理事に就任し、2003年には同連盟の会長を務めた。また、国際舞台でも活躍し、1978年に国際アイスホッケー連盟（IIHF）理事、1994年には副会長に就任。長年にわたり、国際アイスホッケー界の発展に尽力した。特に、アジア地域におけるアイスホッケーのレベル向上を目指し、IIHFが定める世界選手権出場レギュレーションを満たすため、IIHF理事会の支持を得て中国、韓国を説得し、アジアリーグアイスホッケーの創設を主導したことは大きな功績である。
冬季オリンピックには、1972年の札幌オリンピック以降、5大会ほどテレビ解説者として関わった。中でも、1980年のレークプラシッドオリンピックにおける男子アイスホッケーのアメリカ対ソビエト連邦戦（通称「氷上の奇跡」）では、実況アナウンサーと共に興奮を抑えきれずに放送席から立ち上がって解説を続けたという逸話がある。
オリンピック招致・運営にも積極的に関与した。1998年の長野オリンピックでは、招致団の一員として活動。開催決定後は、IIHF会長のルネ・ファゼルと共に、NHL選手の五輪参加に向けた調整役を務めた。また、アイスホッケー会場となる長野市若里多目的スポーツアリーナ（ビッグハット）の収容人数について、招致時の1万人から決定後に5000人へ削減されそうになった問題に対し、2階席を全て取り払い傾斜を急にして仮設席を設置することで、1万50席を確保することに貢献した。同オリンピックでの功績が称えられ、当時のIOC会長フアン・アントニオ・サマランチから五輪の金のバッジを授与された。その後、2020年東京オリンピックの招致活動においても、国際特別戦略委員会のメンバーを務めている。
その長年の功績に対し、2001年には藍綬褒章を受章した。2002年には国際アイスホッケー連盟の推薦を受け、国際オリンピック委員会（IOC）より「オリンピック・オーダー」銀賞を表彰された。この賞は、アイスホッケー界ではウェイン・グレツキー、ウォルター・ブッシュなども受賞している。
2006年には、国際アイスホッケー連盟の殿堂入りを果たした。日本人としては、堤義明、河渕務に続き3人目の快挙であった。
2009年に日本アイスホッケー連盟会長を、2012年には国際アイスホッケー連盟副会長を退任したが、現在もアジアリーグアイスホッケーのチェアマンや、日本オリンピック委員会の国際委員会委員長などの要職を務め、アイスホッケー界および日本のスポーツ界に貢献し続けている。
岩倉組での1年先輩には田名部匡省が、明治大学の後輩には星野好男がいる。
東京都中央区京橋にて、ふすま紙や表具資材を扱う問屋を営む家に生まれた。学童疎開を経験し、小学校の6年間で5つの学校を転々とした。少年時代は柔道やテニスに親しみ、講道館にも通っていたが、中学3年生の時にスウェーデン出身のアイスホッケー選手、スベン・ヨハンソンと出会ったことを契機に、明治高校のアイスホッケー部練習に参加するようになった。高校入学後に正式に入部し、当時の日本では希望者が少なかったゴールキーパーのポジションを自ら志願した。
明治大学に進学後もアイスホッケー部に所属。当時、実業団チームが少なかった日本では、大学がアイスホッケーの主要な舞台であり、特に明治大学、立教大学、早稲田大学、慶應義塾大学、法政大学などが強豪として知られていた。明治大学には、アイスホッケーが盛んな北海道（苫小牧、釧路）、青森県（青森、八戸）、栃木県（日光）などから有望な選手が集まっており、練習環境は厳しかった。当初はパック拾いなどの雑用が多く、一流選手の練習後、ゴールキーパー防具を借りてわずか15分程度しか練習できない状況であった。しかし、冨田は実家があった京橋から駿河台の大学までバスケットシューズで通学するなど、自己流で下半身強化や反射神経、状況判断能力を高めるトレーニングを考案し、練習時間の少なさを補った。大学の同期には、後にスコーバレーオリンピック日本代表となる村野正夫がいた。大学3年次の終盤から、試合に出場できるようになった。
大学卒業後、当時の日本代表監督であった河渕務が率いる岩倉組に入社。東京出身であることから、当初は入社に難色を示されたとされるが、全日本アイスホッケー選手権での活躍が認められ、入社に至った。家業を継ぐことが前提だったため、岩倉組には3シーズン限定の約束で入社したが、社長秘書としての業務も兼務し、企業経営の経験を積む機会を得た。選手としては、岩倉組で4シーズンプレーした。
全日本代表にも選出され、1960年のスコーバレーオリンピック、1962年の世界選手権に出場した。スコーバレーオリンピックへは、横浜港から貨客船「氷川丸」に乗船し、約2週間かけてカナダのバンクーバーに渡り、そこからバスと鉄道を乗り継いでオンタリオ州へ移動するという長旅を経て臨んだ。大会ではグループリーグでカナダ、スウェーデンには敗れたものの、フィンランドと引き分け、順位決定戦でオーストラリアに勝利して7位となった。1962年にアメリカ合衆国のデンバーで開催された世界選手権は、東ドイツに加えソビエト連邦、チェコスロバキアが不参加となる異例の大会となったが、日本はBグループで優勝を果たした。この際、フェアプレー賞としてロレックスの時計を贈られている。
岩倉組での選手生活を終えた後、冨田は29歳で家業である冨田商店に戻り、先進国のインテリア装飾ビジネスを学んだ後、31歳で社長を継いだ。
現役引退後、冨田はスポーツ界の運営に深く関わるようになる。1973年には日本アイスホッケー連盟理事に就任し、2003年には同連盟の会長を務めた。また、国際舞台でも活躍し、1978年に国際アイスホッケー連盟（IIHF）理事、1994年には副会長に就任。長年にわたり、国際アイスホッケー界の発展に尽力した。特に、アジア地域におけるアイスホッケーのレベル向上を目指し、IIHFが定める世界選手権出場レギュレーションを満たすため、IIHF理事会の支持を得て中国、韓国を説得し、アジアリーグアイスホッケーの創設を主導したことは大きな功績である。
冬季オリンピックには、1972年の札幌オリンピック以降、5大会ほどテレビ解説者として関わった。中でも、1980年のレークプラシッドオリンピックにおける男子アイスホッケーのアメリカ対ソビエト連邦戦（通称「氷上の奇跡」）では、実況アナウンサーと共に興奮を抑えきれずに放送席から立ち上がって解説を続けたという逸話がある。
オリンピック招致・運営にも積極的に関与した。1998年の長野オリンピックでは、招致団の一員として活動。開催決定後は、IIHF会長のルネ・ファゼルと共に、NHL選手の五輪参加に向けた調整役を務めた。また、アイスホッケー会場となる長野市若里多目的スポーツアリーナ（ビッグハット）の収容人数について、招致時の1万人から決定後に5000人へ削減されそうになった問題に対し、2階席を全て取り払い傾斜を急にして仮設席を設置することで、1万50席を確保することに貢献した。同オリンピックでの功績が称えられ、当時のIOC会長フアン・アントニオ・サマランチから五輪の金のバッジを授与された。その後、2020年東京オリンピックの招致活動においても、国際特別戦略委員会のメンバーを務めている。
その長年の功績に対し、2001年には藍綬褒章を受章した。2002年には国際アイスホッケー連盟の推薦を受け、国際オリンピック委員会（IOC）より「オリンピック・オーダー」銀賞を表彰された。この賞は、アイスホッケー界ではウェイン・グレツキー、ウォルター・ブッシュなども受賞している。
2006年には、国際アイスホッケー連盟の殿堂入りを果たした。日本人としては、堤義明、河渕務に続き3人目の快挙であった。
2009年に日本アイスホッケー連盟会長を、2012年には国際アイスホッケー連盟副会長を退任したが、現在もアジアリーグアイスホッケーのチェアマンや、日本オリンピック委員会の国際委員会委員長などの要職を務め、アイスホッケー界および日本のスポーツ界に貢献し続けている。
岩倉組での1年先輩には田名部匡省が、明治大学の後輩には星野好男がいる。
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