冬樹社

冬樹社について

冬樹社（とうじゅしゃ）は、日本の出版界において重要な役割を果たした出版社ですが、1991年に廃業しました。1958年8月に設立され、矢田挿雲の著作『江戸から東京へ』を最初に出版したものの、その後休業に入ります。状況は変わり、1964年に出版活動を再開し、1966年からはスキー専門誌『スキージャーナル』を創刊。スキー部門においては独立後、文芸路線へと転換を図ります。

経営と出版の展開

二代社長である高橋直良のもと、編集者の森内俊雄や高橋徹などが参与し、様々な文学作品を刊行しました。特に『坂口安吾全集』や『岡本かの子全集』などの全集作品は文芸界において高い評価を得ました。1980年代に入ると、ニュー・アカデミズムやポストモダンといった流行に乗り、雑誌「GS たのしい知識」を刊行し、多くの俊才たちが寄稿しました。この時期に刊行された作品には、四方田犬彦の『クリティック』や蓮實重彦の『映画 誘惑のエクリチェール』、栗本慎一郎と吉本隆明による『相対幻論』などがあります。このような活動から、評論家の坪内祐三は「冬樹社という時代があった」と振り返っています。

経営不安と廃業

しかし、1980年代半ばになると、経営不安が叫ばれるようになりました。最終的には、1991年に冬樹社は廃業を余儀なくされます。その後、商号を引き継いだ企業がIT関連の出版を試みるも、こちらも再建は叶わず廃業する事態に至りました。

定期刊行物

冬樹社は、数多くの定期刊行物を世に送り出しました。代表的なものには以下の雑誌があります。

• - 『スキージャーナル』（1966年創刊）：スキーに特化した専門誌。
• - 『カイエ』（1978年創刊）：月刊の雑誌。
• - 『50冊の本』（1978年創刊）：書評を中心に扱う雑誌。
• - 『GS たのしい知識』（1984年創刊）：浅田彰や四方田犬彦らが責任編集を務める季刊誌。
• - 『ビデパル』（1984年創刊）：オーディオビジュアルに関する専門誌。

主な刊行物

また、氷山の一角として、多くの重要な刊行物も挙げられます。いくつかの代表的な書籍を以下に紹介します。

• - 『十一月、水晶』野呂邦暢：芥川賞受賞後の第一著作集。
• - 『英米文学作家論叢書』：著者に川口喬一、川本静子、小池滋などが名を連ねる。
• - 『山川方夫全集』：全5巻からなる全集。
• - 『定本 坂口安吾全集』：全13巻。

その他にも、栗本慎一郎・吉本隆明による『相対原論』や、柄谷行人の『反文学論』、坂本龍一とのコラボで発刊された『長電話』など多様なジャンルを網羅していました。冬樹社の一部作品は今もなお読者の間で親しまれ、彼らが築いてきた文学の足跡は消えることはありません。

冬樹社は、弊社の文化的貢献において、重要な意義を持ち続ける存在です。

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