冬物語 (シェイクスピア)

『冬物語』（The Winter's Tale）は、ウィリアム・シェイクスピアによって書かれた、喜劇でありながらもロマンスの要素を強く持つ戯曲です。1610年に完成したとされています。

物語は、シチリア王リオンティーズの激しい嫉妬心から始まります。彼は、親友であるボヘミア王ポリクシニーズが、自身の妻ハーマイオニと密通していると誤解します。この誤解が、悲劇の連鎖を引き起こします。

リオンティーズは、臣下であるカミローにポリクシニーズの毒殺を命じますが、カミローはポリクシニーズの無実を知っていたため、彼に危険を知らせ、二人でシチリアを脱出します。激怒したリオンティーズは、ハーマイオニを牢獄に入れ、獄中で生まれた王女パーディタをボヘミア領内に捨てるよう臣下のアンティゴナスに命じます。アンティゴナスは、この命令を実行しますが、後に悲劇的な最期を迎えます。

神託によって、リオンティーズの疑いは誤解であることが明らかになります。さらに、王子マミリアスが母を心配するあまりに亡くなり、ハーマイオニも獄中で自害したと知らされます。リオンティーズは、自身の行動を深く後悔しますが、パーディタの行方は依然として不明のままです。

物語は16年後、ボヘミアへと舞台を移します。パーディタは、羊飼いに拾われ、美しい少女に成長していました。ボヘミア王子フロリゼルは、身分を隠してパーディタと恋に落ちますが、父ポリクシニーズの反対に遭います。フロリゼルは、カミローの助言を受け、パーディタとともにシチリアへ向かいます。

リオンティーズは、フロリゼルとパーディタを迎え入れますが、依然としてポリクシニーズとの関係は修復していません。しかし、ポリクシニーズが羊飼いを伴ってシチリアを訪れたことで、パーディタが実はリオンティーズの娘であることが明らかになります。フロリゼルとパーディタは晴れて結ばれ、リオンティーズとポリクシニーズの友情も回復します。

さらに、驚くべきことに、ハーマイオニは生きており、ポーリーナに匿われていました。ポーリーナの配慮によって、リオンティーズとハーマイオニは再会を果たし、物語は感動的な結末を迎えます。

この劇は、時間経過を語る「時」が劇中に登場するのが特徴的です。また、登場人物も多く、それぞれが物語の展開に重要な役割を果たしています。

登場人物は以下の通りです。

リオンティーズ（シチリア王）
マミリアス（シチリアの幼王子）
カミロー（シチリアの貴族）
アンティゴナス（シチリアの貴族）
クリオミニーズ（シチリアの貴族）
ダイオン（シチリアの貴族）
ポリクシニーズ（ボヘミア王）
フロリゼル（ボヘミアの王子）
アーキデーマス（ボヘミアの貴族）
老羊飼い（パーディタの父と言われている人）
道化（その息子）
オートリカス（ごろつき）
水夫
牢番
ハーマイオニ（リオンティーズの妃）
パーディタ（リオンティーズとハーマイオニの娘）
ポーリーナ（アンティゴナスの妻）
エミリア（ハーマイオニの侍女）
モプサ（羊飼いの娘）
ドーカス（羊飼いの娘）
貴族たち、紳士たち、淑女たち、役人たち、召使いたち、羊飼いの男女たち
時（説明役として）

この物語は、シチリアとボヘミアという二つの国を舞台に展開します。様々な翻訳が存在し、日本では「冬の夜ばなし」「冬の夜語り」などと訳されています。

『冬物語』は、シェイクスピアのロマンス劇の中でも特に、悲劇と喜劇の要素が複雑に絡み合った作品であり、人間の心の複雑さや、運命のいたずら、そして許しと和解の重要性を描いた作品と言えるでしょう。

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