冷間始動

冷間始動とは

冷間始動（れいかんしどう）またはコールド・スタートは、機械用語の一つで、エンジンや電動機などの機関が冷たい状態から稼働を始めることを指します。具体的には、周囲の温度と同等か、それよりも低い状態での始動を意味します。

冷間始動の概念

多くの人は冷間始動と言うと、寒冷地や冬の低温条件でのエンジン始動を想起するでしょう。しかし、環境の温度が低い場合は人間にとってどれだけ寒く感じるかにかかわらず、機関の温度が周囲と同じかそれよりも低ければそれは冷間始動に該当します。そのため、気温が高くても、機関が冷却されていれば冷間始動が発生する可能性があります。

冷間時には、機関の温度が低いため、温間時に比べて始動性が一時的に劣ります。特に内燃機関の場合、適切な空燃比を獲得するためには吸気と燃料の比率を調整する必要があります。これに対応するため、ガソリンエンジンやケロシンエンジンでは、冷間始動の際にチョーク弁を用いることで吸入空気量を減らしたり、コールドスタートインジェクターで冷間時の燃料供給を増やすことが一般的です。

自動車での冷間始動

自動車やオートバイに多く搭載されているエンジンでは、冷間始動が身近な問題です。たとえ温暖な地域で毎日運用されている車両でも、一晩などの間隔が空くとエンジンが外気温に近くなり、冷間始動となります。

現代の自動車においては、燃料噴射装置が広く普及し、エンジンコントロールユニット（ECU）が冷間時の燃料を調整します。これにより、冷間始動の際に運転者が意識せずにエンジンを始動できる車がほとんどです。一方で、一部のオートバイでは手動式のチョークが使われており、その場合は冷間始動を意識して始動する必要があります。また、どの自動車でも冷間始動後には暖機運転が推奨されます。

極寒地における冷間始動

冬の気温が氷点下30度以下に達する地域では、冷間始動が非常に重要です。例えば、北欧やロシア、カナダなどの国では、エンジンの冷却水経路にブロックヒーターを設置して、エンジンを停めている間に通電しておくのが一般的です。極寒では冷却水やエンジンオイルが凍結してしまうことがあるため、これを防ぐ必要があります。

さらに、ディーゼルエンジンを使用する場合は軽油の凍結にも注意が必要です。日本国内の寒冷地では、JIS3号または特3号の軽油が必要となります。

ブロックヒーターは、1940年代にカナダのアンドリュー・フリーマンによって発明されました。その後、シリンダーヘッドボルトを使ったヘッドボルトヒーターが開発され、エンジンを効率的に予熱する手段として現在に至ります。かつては、カナダのドライバーは自動車を暖炉のある室内に保管し、エンジンオイルをその都度調整する必要がありました。極寒な地域ではこのような寒冷対策が不可欠となります。

また日本の満州では、ハクキンカイロなどを用いて内燃機関の予熱を行ったという事例もあります。冷間始動は、厳しい環境でのエンジン運用において、非常に重要な要素の一つであると言えるでしょう。

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