凄ノ王

凄ノ王：神話を基にした暴力と超能力の物語

『凄ノ王』（すさのおう）は、永井豪とダイナミックプロが手掛けた漫画作品であり、『週刊少年マガジン』で連載され、第4回講談社漫画賞少年部門を受賞しました。

概要

本作は日本神話をモチーフとし、過激な暴力描写と超能力を組み合わせた異色の作品です。連載中、物語は佳境を迎え、主人公の怒りが破壊神・凄ノ王を呼び覚ますという衝撃的な展開を見せますが、全世界が壊滅的な打撃を受けたところで連載は終了します。この結末は未完と捉えられがちですが、永井豪自身は、物語が最大限に拡張した時点での終了を当初から意図していたと説明しています。その後、様々な雑誌で続編が不定期に掲載され、メディアミックスも展開されました。

1982年には、永井豪の実兄である永井泰宇によるノベライズ版『凄ノ王伝説』が角川書店から刊行されました。その後、永井豪も角川春樹からの依頼を受け、漫画版の続編『凄ノ王伝説』に着手。1985年以降、角川書店の各誌で続編や番外編が断続的に掲載され、未完ながらも単行本としてまとめられました。

1996年には、オリジナルの発行元である講談社から『凄ノ王 超完全完結版』（全6巻）が刊行されました。この版は、『少年マガジン』版に角川書店版の一部（約250ページ）を追加したものであり、『超完全完結版』の追加部分は、角川版とは異なる展開を見せる物語となっています。

単行本化の際には、既存部分の描き直しや追加、ページの削除などが行われ、各版で内容に差異が見られます。また、一時期は『バイオレンスジャック』と本作を一体化させる構想もありました。

1989年には、PCエンジン用RPG『凄ノ王伝説』が発売されました。このゲームは、『少年マガジン』版のその後の世界を描いています。

あらすじ

「少年マガジン」版

耳宇（みう）高校に通う朱紗真悟は、片思いの相手である雪代小百合に誘われ、超能力クラブに入部します。そこで、部長の美剣千草や、彼女と対立する天才高校生・瓜生麗と出会います。ある日、雪代と共に裏山へ行った朱紗は、彼女から愛の告白を受けますが、直後に不良グループに襲われ、雪代は輪姦されてしまいます。

瓜生によって救出されたものの、雪代は姿を消し、それをきっかけに朱紗の超能力が覚醒します。彼は不良たちを次々と倒していきますが、それは耳宇高校を牛耳る部団連合や、超能力者集団・不死団（ノスフェラトゥ）、そして外国人超能力者集団との戦いを招きます。

戦いの末、朱紗は瓜生の元で奴隷として働く雪代を目撃し、怒りから超能力の怪物・凄ノ王として覚醒し、暴走します。凄ノ王は肉体を捨て、邪悪なエネルギー体となり、美剣一族の操る空中戦艦・天浮舟（ラングーン）と激突。その一方で、宇宙からは巨大な生命体・八岐大蛇が地球に向かっていました。

そんな中、魔に取り憑かれた青沼は、無人の町で立ち上がった朱紗と出会うのでした。

「超完全完結版」での追加エピローグ

凄ノ王の波動から生き残った瓜生と雪代は、自分たちがスサノオノミコトが魔と対峙するきっかけを作ったアマテラスやアメノタヂカラオにならなければならないと考え、朱紗を追います。天浮舟は多大な犠牲を払いながらも、凄ノ王の消滅に成功。朱紗は、朱紗一族の協力などを経て、英雄王真神（スサノ・オウノ・ミコト）として成長し、瓜生たちの前に姿を現わします。

主な登場人物

朱紗真悟（すさ しんご）: 主人公。雪代の事件をきっかけに超能力と暴力の巨人と化します。
雪代小百合（ゆきしろ さゆり）: 瓜生の奴隷となりますが、朱紗への愛を失わない少女。
美剣千草（みつるぎ ちぐさ）: 凄ノ王との戦いに備える美剣一族の娘で、高天原の一族の血を引く摩利支天の生まれ変わり。
瓜生麗（うりゅう れい）: 天才的な超能力を持ち、凄ノ王を復活させ新世界を創造しようと企む高校生。
合田（ごうだ）: ボクシング部主将。朱紗と友情を深め、反部団連合の同志となります。
茂坂（もさか）: 朱紗の悪友。透視能力を開花させます。
黒田ミコ: 瓜生の配下。アポーツという能力を持つ体操部員。
青沼: 雪代輪姦事件の実行犯。後に魔物に取り憑かれます。

未完という魅力

永井豪は、物語を最大限にスケールアップさせた上での未完という形にこだわりを持っていました。その後の石川賢による国枝史郎の未完小説の漫画化に際し、永井豪は未完の作品の面白さについて語っています。

角川書店版

角川書店からは、『凄ノ王伝説・火神子』、『新・凄ノ王』、『凄ノ王伝説・闇の魔人編』、『凄ノ王伝説外伝』などが発表されました。

「凄ノ王伝説・火神子」あらすじ

葛城ゆかは、教師に襲われ青沼グループに輪姦されそうになった際、炎火神子に救われます。ゆかの正体は朱紗真悟であり、凄ノ王によって暴力と性の嵐が吹き荒れる世界へと足を踏み入れることになります。

小説版

永井豪の兄、永井泰宇による小説『凄ノ王伝説』が角川書店から刊行されました。全12巻に及ぶ長編で、『少年マガジン』連載版のノベライズから独自の展開を見せます。

ゲーム版

1989年にハドソンからPCエンジン用RPG『凄ノ王伝説』が発売されました。ゲームでは、荒廃した世界を支配する魔神を倒すため、朱紗真悟が戦いを繰り広げます。

その他の情報

作中に登場する超能力クラブには、永井豪の友人であるSF作家・小松左京やファンクラブ会長などが登場します。

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