摩利支天

摩利支天について

摩利支天（まりしてん、梵語：Mārīcī）は、仏教における重要な守護神の一尊であり、天部に位置づけられています。彼女はしばしば梵天の子や日天の妃とされ、摩利支菩薩または威光菩薩とも呼ばれています。

摩利支天の名前は、「マリーチ」という言葉から派生しており、これは陽炎や太陽、月の光を象徴しています。彼女の起源は、古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』に登場する暁の女神ウシャスにさかのぼると考えられています。このような背景から、摩利支天の特性には、不滅や無形が含まれており、物質的なものに影響されることはありません。常に日天の前を疾走し、自在な神通力を持つとされています。これらの特性が、彼女が武士にとって特別な意味を持つ理由です。

日本における信仰

中世以降、日本では摩利支天が護身や富の神として信仰を集めました。著名な武将である楠木正成は兜の中に摩利支天の小像を隠し、毛利元就や立花道雪は摩利支天の旗を用いました。また、山本勘助や前田利家といった武将も彼女に深い信仰を持っていたと伝えられています。摩利支天は禅宗や日蓮宗でも護法善神として重視されています。

さらに、日本の山岳信仰では、摩利支天の名を冠した山が存在しています。具体的には、木曽御嶽山、乗鞍岳、甲斐駒ヶ岳が例に挙げられます。武士たちにとっては、摩利支天の信仰が戦場での無事や勝利をもたらすと考えられ、タイ捨流剣術では道具として「摩利支天経」を唱えることが慣例となっています。

摩利支天の像容

摩利支天は元々、二臂の女神として表現されていますが、時には男神像としても造られることがあります。また、三面六臂や三面八臂で月や猪に乗った姿で描かれることもあります。

摩利支天の真言と陀羅尼

摩利支天を祈る際の真言は「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ」または「オン・マリシエイ・ソワカ」です。さらに、彼女に関連する陀羅尼も存在し、これによって信者が摩利支天の力を受け取るとされています。

摩利支天の法

摩利支天に基づいた「摩利支天の法」は、武士が戦場に臨む際に行う修法の一つです。これは、右手と左手の指を立ててそれぞれ刀と鞘を表し、空中を切った後、刀としてみなされた右手を鞘に納める行為を含みます。このような形式は、「摩利支天」が武士の守り本尊として人気があることを物語っています。

主な寺院

日本には摩利支天を祀る寺院が点在しており、以下はその一部です：
1. 妙宣山徳大寺 - 東京都台東区上野。
2. 禅居院 - 神奈川県鎌倉市。
3. 摩利支天山寶泉寺 - 石川県金沢市。
4. 叡昌山本法寺 - 京都市上京区。
5. 正法山妙心禪寺聖澤院 - 京都市右京区。
6. 東山建仁禪寺禪居庵 - 京都市。
これらの寺院は、摩利支天の信仰の中心地となり、文化的な価値も高い存在です。

摩利支天は、日本の歴史において重要な役割を果たし、武士を中心に広く信仰され続けてきました。彼女の多面的な象徴としての役割は、信者たちにとっての守護や財をもたらす存在として、今も変わらず受け継がれています。

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