出てこい、ブラック・アンド・タンズども

『出てこい、ブラック・アンド・タンズども』の紹介

『出てこい、ブラック・アンド・タンズども』（Come Out, Ye Black and Tans）は、アイルランドの歴史に深く根付いた闘争歌で、アイルランド共和主義者によって歌われました。この曲は、1972年にアイルランドのフォークバンド、ウルフ・トーンズによってアルバム『Let the People Sing』に収録され、広く知られるようになりました。作詞者はドミニク・ビーアンで、曲はアイルランド独立戦争における悪名高いイギリスの警察部隊、ブラック・アンド・タンズに焦点を当てています。

ブラック・アンド・タンズの背景

ブラック・アンド・タンズとは、アイルランド独立戦争中に王立アイルランド警察隊（RIC）が増強を図るために雇用した警察官のことを指します。多くのメンバーは本土からの復員兵であり、共和主義者に対する報復任務に用いられたため、非常に悪名が高い存在となりました。このため、多くのアイルランド人は彼らを特定せずに「ブラック・アンド・タンズ」と呼ぶことが一般的でした。

ビーアンの父であるスティーブン・ビーアンは、アイルランド独立戦争でマイケル・コリンズの部下として活動を行い、戦後内戦においては反条約派として投獄され、公職から追放された元IRAの闘士でした。この曲には、彼に対する賛辞が込められており、歌詞には父親が口ずさんでいたメロディーを思い出す場面から始まります。

歌詞の内容

曲の歌詞では、「出てこい、ブラック・アンド・タンズども。出てきて男らしく俺と戦え」というフレーズが特に象徴的です。この部分は、内戦後のダブリンでロイヤリストやイギリス兵たちが闊歩する中で、歌詞の主人公が抱く怒りと反抗心を物語っています。

また、歌詞はイギリスによるアラブ人やズールー人への弾圧や植民地支配、さらにアイルランドの政治に対する言及も含まれています。特に、チャールズ・スチュワート・パーネルの失脚や、イースター蜂起後に多くの人々が銃殺されたことに対する批判が詰め込まれています。

歌の受容と影響

この曲は、アイルランドだけでなく、他国でも広く歌われてきました。例えば、ドイツ民主共和国（東ドイツ）では、『出てこい、ブラック・アンド・タンズども』の替え歌として『Es ziehen die Söhne los』が存在しました。これは、歌の普遍的な反抗のメッセージが国境を越えて共感を呼んでいることを示しています。

結論

『出てこい、ブラック・アンド・タンズども』は、アイルランドの歴史と闘争を反映した重要な文化的表現であり、今日でも多くの人々に愛され続けています。アイルランド独立運動の象徴的な曲として、政治的なメッセージを持ち続けているこの歌は、歌詞に込められた過去の痛みに対する深い理解と認識を促しています。

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