出口川のカドミウム汚染

出口川のカドミウム汚染

概要

出口川のカドミウム汚染は1986年に広島県府中市で初めて明らかになった重金属による環境問題である。この問題の発端は、採石場での作業による鉱脈の露出で、これが原因でカドミウムが漏れ出し、川や周辺の田畑を汚染したものである。汚染水の処理を目的とした出口川湧水処理場が設立されたが、汚染被害は現在も続いており、老朽化した施設とその維持管理に関する課題が山積している。これにより、法律や採石法の運用にも影響が出ている。

出口川の背景

出口川は芦田川の支流で全長は約7キロメートル。山間部から流れ出る川で、歴史的に宿場町として栄え、現在でも古い街並みが残る地域である。また、昭和初期には近隣の瀬戸鉱山で亜鉛や銅が採掘されており、周辺の地層には重金属を含む鉱床が存在する。

検出された重金属

1986年の夏、入口川で養殖されていた鯉が大量死する事件が起きたことがきっかけで、住民が川の水の調査を依頼。調査の結果、カドミウムを含む重金属が基準を超えて検出された。この問題は、広島大学や専門家の調査によって、御調採石場からの重金属浸出によるものであることが確認された。特に雨水が硫化鉱物と反応して生成された硫酸が重金属を溶出させることが確認された。

地元の反応と初期対応

汚染の発覚後、府中市では住民に対して出口川での遊泳を控えるよう指導し、汚染水の処理を試みた。しかし、処理能力には限度があり、残った汚染水はそのまま川に放流され続けたことが問題視された。国会ではこの問題が取り上げられたが、十分な対応がなされなかった。

処理施設と封鎖された採石場

1987年には出口川湧水処理場が建設され、採石場はモルタルで封鎖された。以降も汚染水の濃度は時間と共に減少したものの、依然として環境基準を大幅に超えるカドミウム濃度が残っている。処理場の運営は府中市が行い、補助金を得て運営されているが、老朽化が進んでいる。

現行の問題

出口川やその周辺の環境は、採石業の継続によって新たな汚染の危惧が存在する。老朽化した処理施設や採石場は運営費用の負担増加を招いており、府中市の財政に大きな負担をかけている。これに加え、2018年の豪雨や2022年の汚泥流出事故など、施設の管理体制の問題が明らかになった。

今後の展望

このカドミウム汚染問題は、日本で初めて重金属汚染が採石業に関連して露呈したケースであり、他の地域における採石業の許認可基準にも影響を与えている。汚染の早期発見を目的とした鯉の養殖も続けられており、今後の環境保護や法律の強化が期待される。政府や自治体、地域住民が協力しあい、持続可能な環境を目指す必要がある。

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