出来ごころ

映画『出来ごころ』の紹介

『出来ごころ』は1933年に公開された、日本映画の名匠小津安二郎が監督を務めた作品です。この映画は松竹キネマが製作・配給を行い、モノクロのサイレント映画として101分の尺で展開します。

基本情報

• - 公開日: 1933年9月7日
• - 監督: 小津安二郎
• - 製作/配給: 松竹キネマ
• - フォーマット: モノクロ、スタンダード、サイレント
• - 上映時間: 約100分

あらすじ

物語は昭和初期の東京下町を舞台に、主人公である喜八（坂本武）が中心になります。彼は男やもめで、小学3年生の息子・富夫を育てながら工場で働く冴えない中年男です。長年の友である元戦友・次郎とは隣同士の長屋に住んでおり、同じ職場で共に働いています。

ある夜、喜八は仕事を失い、行き場をなくした若い娘・春江に出会い、一目惚れして宿を提供します。春江は喜八が紹介した一膳飯屋で働き始め、そこで二人は次第に距離を縮めていきます。しかし、春江は喜八には感謝をしつつも、彼女の心は美男の次郎に向けられていました。次郎は春江の気持ちを冷たく断り続け、とまどった春江は“かあやん”からの頼みで喜八に助けを求めます。喜八は失恋の痛手を抱えつつ、次郎を説得しますが、次郎は全く首を縦に振りません。

そんな中、息子の富夫が急病にかかり入院することになります。無事に退院するものの、喜八は治療費が支払えないという厳しい状況に直面します。春江は恩返しのためにお金を稼ぐと申し出ますが、次郎は彼女が夜の商売に落ちることを心配し、実は自分も春江に想いを寄せていることを打ち明けます。次郎は喜八の気持ちを考え、春江を遠ざけていたのです。

次郎は金を工面するために北海道の漁師として働くことを決意します。それを知った喜八は、次郎に春江を引き渡すつもりで彼を殴り気絶させ、自ら北海道行きの船に乗りますが、出発から間もなく、息子への思いが募り、海へ飛び込んで帰路を選ぶことになります。

スタッフとキャスト

• - 監督: 小津安二郎
• - 脚本: 池田忠雄
• - 原案: ジェームス槇（小津）
• - 撮影: 杉本正二郎
• - 美術監督: 脇田世根一
• - 編集: 石川和雄

主なキャスト

• - 喜八: 坂本武
• - 春江: 伏見信子
• - 次郎: 大日方伝
• - おとめ: 飯田蝶子
• - 富坊: 突貫小僧
• - その他: 谷麗光、西村青児、加藤清一

Trivia

この作品は、第10回キネマ旬報ベスト・テンで第一位を獲得し、映画史に名を刻む作品となりました。また、小津安二郎は本作の制作前に、大正時代の交通ストライキを題材にした劇のシナリオを執筆していたが、その興行価値に乏しく、本作が代わりに制作されることとなりました。次郎の部屋に貼られているポスターは、当時の交通ストライキに基づいた戯曲『交運の兄妹』のものです。

『出来ごころ』は、喜八の愛情や友情が交錯する心温まるストーリーと、小津安二郎独自の視点が見事に表現された作品として、現在でも多くの人々に愛されています。

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