伏見信子

伏見信子：映画と歌で彩られた女優の生涯

伏見信子（ふしみ のぶこ、1915年10月10日 - 生死不明）は、昭和初期に映画女優、歌手として活躍した人物です。本名を伏見延子といい、伏見延江という別名も使用していました。

生い立ちと初期のキャリア

東京市浅草区小島町に生まれた伏見信子は、同志社女学校（現・同志社女子中学校・高等学校）高等女学部を卒業しました。父親は新派俳優の伏見三郎で、姉の直江と共に幼い頃から舞台に立ち、子役として新派の舞台に出演していました。

1926年、姉と共に帝国キネマに入社し、映画界へ足を踏み入れます。翌年には姉と共に阪東妻三郎プロへ移籍し、その後日活大将軍現代劇部へ入社。時代劇部では「大地に立つ」や「小市民」で主演を務めました。1928年には同志社女学校高等女学部に入学し、学業と並行して「春または丘へ」で主役を演じるなど、女優としてのキャリアを積み重ねていきました。

1931年、「御誂次郎吉格子」で大河内伝次郎と共演後、日活を退社しました。

人気女優としての躍進

日活退社後、伏見信子は明治大学のスター選手であった田部武雄と交際していました。1933年には松竹蒲田に入社し、五所平之助監督の「十九の春」で主演を務めたことをきっかけに、人気女優としての地位を確立します。さらに、小津安二郎監督の「出来ごころ」では大日方伝と共演し、その人気を不動のものとしました。

1934年には東京宝塚劇場専属となり、舞台にも活躍の場を広げます。1935年には姉と共に新興キネマへ移籍し、大泉撮影所で「稽古扇」や「暁の麗人」に主演しました。

歌手としての成功と結婚・離婚

1936年、「初恋日記」の主題歌「花言葉の唄」で、歌手の松平晃と共演し、歌手としても一世を風靡します。この共演がきっかけで松平晃と結婚しましたが、二人の結婚生活は1年余りで終わりを迎えました。一時は伏見姉妹の旅芝居に加わっていた時期もありました。

その後

1937年、松竹下加茂に入社し、坂東好太郎や高田浩吉らと共演しました。1940年に松竹を退社し、1941年からは舞台を中心に活動。その後は楽団を結成し、1947年まで活動を続け引退しました。引退後は再婚し、飲食店などを経営していたと伝えられています。

1971年には、東京12チャンネルの音楽番組「なつかしの歌声」に出演し、元夫である松平晃とのデュエット曲「花言葉の唄」や「初恋日記」などを披露しました（「花言葉の唄」は松平のコロムビア・武蔵野音楽学校の後輩にあたる岡本敦郎とのデュエット）。姉の伏見直江とは、1982年に彼女が亡くなるまで大変仲の良い姉妹でした。

伏見信子は、映画、舞台、歌と多岐にわたる分野で才能を発揮し、昭和初期の芸能界を彩った一人です。その華やかな活躍は、今もなお多くの人々の記憶に残っています。

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