突貫小僧

突貫小僧について

『突貫小僧』（とっかんこぞう）は、1929年11月24日に公開された日本の映画で、松竹キネマが製作・配給しました。この作品は、著名な映画監督である小津安二郎の監督作品であり、モノクロ・スタンダード・サイレント映画として38分の長さです。初回の興行は帝国館で行われました。

制作背景

本作の背景には、松竹蒲田撮影所所長の城戸四郎が掲げた方針がありました。彼は「庶民の日常生活の中からユーモアや皮肉を探り、人生の真実を会得せよ」と指導しており、この方針に基づき多くの短編・中編映画が製作されました。『突貫小僧』は、その一環として制作されたコメディ映画です。前作『会社員生活』で子役を務めた青木富夫が再び起用され、彼の活躍が注目されました。

本作は、他の予定されていた作品が突然中止になるという状況から急遽撮影されたため、撮影期間はわずか4日でした。昼間はロケーション撮影、夜は撮影所での撮影という非常にタイトなスケジュールで進められました。この過密なスケジュールのため、子役の青木はリハーサルにうんざりし、しばしば逃げ回ってスタッフを困らせました。また、撮影中に使用された菓子パンのエピソードもあります。青木がリハーサルで菓子パンを次々と失敗してしまったため、用意していたパンが不足すると、その後は綿製のパンを代用したり、本番では割れたパンをつなぎ合わせて使用するなど、苦心しながらの撮影が行われました。

あらすじ

物語は、子供たちが路地でかくれんぼをして遊ぶ場面から始まります。そこに現れた人さらいの文吉は、子ども鉄坊を「楽しいところへ連れて行ってあげよう」と誘います。しかし、途中で鉄坊がぐずり出し、文吉は彼をおとなしくさせるために菓子パンやおもちゃを買い与えます。しかし、文吉は鉄坊のいたずらに悩まされ、変装用のひげをむしり取られるなど手をこまねくことに。さらに近くに警官がいるため、文吉は緊張します。文吉は何とか鉄坊を親分の権寅のもとに連れて行きますが、そこで鉄坊は再び悪さの限りを尽くし、権寅に「どこかへ捨ててきてしまえ」と言われてしまいます。文吉は再度、元の場所へ戻ります。子どもたちはまだ遊んでおり、鉄坊は自慢げに他の子どもたちにおもちゃを見せ、文吉を指さします。結局、文吉は子どもたちに追いかけられる羽目になり、大慌てで逃げ出すという結末になります。

批評と影響

本作の中心となるキャラクターは青木富夫演じる子どもですが、共演した大人の俳優、斎藤達雄と坂本武の演技によって、青木の演技が引き立てられました。とはいえ、作品全体は「ニュアンスのない無機的な作品」と評価されることがあり、当時の『キネマ旬報』では「小津の一つのデッサンと見るのが良い」と評されました。さらに、青木は本作を経て松竹蒲田の人気子役となり、「突貫小僧」という名前で広く知られるようになりました。この流れを受けて、他の子役たちにも「爆弾小僧」や「アメリカ小僧」という同様の名前が付けられることになりました。

フィルムの発見と復元

『突貫小僧』は、長らくフィルムが失われているとされていましたが、1988年に家庭用9.5mmフィルム版のプリントが発見されました。このプリントは映画評論家の山根貞男の知人によって収集され、映画センターに寄贈されて35mmフィルムへと復元されました。しかし、この発見されたプリントにはいくつかの欠落部分が存在しており、そのため完全な形ではありませんでした。2023年には、現存するフィルムの中からさらに長い16mmフィルムが見つかり、希望される復元が進んでいます。

スタッフ

• - 監督：小津安二郎
• - 原案：野津忠二
• - 脚本：池田忠雄
• - 撮影：野村昊

キャスト

• - 人攫い文吉：斎藤達雄
• - 鉄坊：青木富夫
• - 人攫いの親分権寅：坂本武

まとめ

『突貫小僧』は、小津安二郎の独特の視点から描かれる子どもや大人の関係性をユーモラスに描いた作品です。映画の歴史の中でも特に重要な位置を占めるこの作品を通じて、当時の日本社会の一端を垣間見ることができます。

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