出水麓

出水麓（いずみふもと）：薩摩武士の息吹が残る、歴史的な武家屋敷群

出水麓は、鹿児島県出水市麓町に位置する、江戸時代の武家屋敷群を保存した地区です。薩摩藩が防衛拠点として整備した「麓」と呼ばれる集落の一つで、その中でも最大規模を誇ります。

特徴

出水麓の特徴は、整然と区画された武家屋敷と、丸石を積み上げた石垣、そして高い垣根です。丘陵地を平坦に造成し、道路を掘り下げることで、武家屋敷の敷地を高くしています。これは、武士の居住空間としての役割だけでなく、防衛拠点としての機能も兼ね備えていたことを示しています。現在も約50戸の武家屋敷が残っており、当時の面影を色濃く残しています。

歴史

薩摩藩による造成

薩摩藩は、領内の防衛拠点として「麓」と呼ばれる集落を各地に築き、武士を配置しました。江戸時代末期には約120ヶ所の麓が存在したとされ、出水麓はその中でも最も古く、最大規模を誇ります。出水は薩摩藩と肥後藩の国境に近かったため、特に重要視され、慶長4年（1599年）から約30年かけて造成されました。

西郷隆盛も参勤交代の際に滞在し、坂本龍馬も出水近くの関所で薩摩国への入国を拒否されたという逸話が残っています。

保存と活用

出水麓の歴史的価値が認められ、1995年（平成7年）に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。これは、鹿児島県内では知覧に次ぐ2例目です。さらに、2019年（令和元年）には、出水麓を含む8つの麓と鹿児島市が「薩摩の武士が生きた町」として日本遺産に認定されました。

2017年（平成29年）には、古文書や武具などを展示する出水麓歴史館が開館し、地域の歴史と文化を伝えています。

名所・旧跡

出水麓歴史館: 出水麓の歴史や文化を紹介する展示施設。
竹添邸（旧竹添家住宅）: 公開されている武家屋敷。当時の生活様式を垣間見ることができます。
税所邸（旧税所家住宅）: こちらも公開されている武家屋敷です。
宮路邸: NHK大河ドラマ「篤姫」のロケ地にもなった武家屋敷。2022年（令和4年）には宿泊施設「RITA 出水麓 宮路邸」として開業しました。
御仮屋門: 現在は出水市立出水小学校の正門として使用されています。
諏訪神社: 地域の人々に信仰されている神社。
出水市護国神社

麓まつり

毎年開催される「麓まつり」では、武者行列や郷土芸能などが披露され、多くの観光客で賑わいます。

重要伝統的建造物群保存地区データ

地区名称：出水市出水麓
種別：武家町
選定年月日：1995年（平成7年）12月26日
面積：43.8ヘクタール

交通

JR九州新幹線・肥薩おれんじ鉄道 出水駅から徒歩

出水麓は、武士の生活と文化が息づく貴重な場所です。石垣と垣根に囲まれた静かな通りを歩けば、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わえるでしょう。歴史好きはもちろん、日本の原風景に触れたい方にもおすすめの場所です。

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