出田敬三

出田敬三：音楽と教育の融合を追求する作曲家・指揮者

出田敬三（いでた けいぞう）氏は、1955年熊本県生まれの作曲家、指揮者、そして教育者です。少年時代にウィーン少年合唱団の歌声に魅せられたことをきっかけに音楽の道へ進み、国立音楽大学卒業後、ウィーン国立音楽大学作曲科、ウィーン市立音楽院指揮科を修了するなど、国際的な音楽教育を受けました。

芸術性と大衆性の両立

東京での活動中は、芸術性の高い音楽を学校で学びながら、クラブやキャバレーでの演奏活動、芸能界での編曲などを通して大衆音楽にも携わりました。この経験は、彼に「人を喜ばせる、楽しませる」音楽の原点を深く理解させることになります。ウィーン留学時代には、オペラを毎日鑑賞するなど、音楽への探究心を深めました。

多様な師事と音楽観

作曲では高田三郎氏、エーリヒ・ウルバンナー氏に師事し、指揮はゲンナジー・ロジェストヴェンスキー氏、ペーター・シュヴァルツ氏、合唱指揮はギュンター・トイリング氏に師事するなど、錚々たる音楽家から指導を受けました。トランペット奏者の北村源三氏にも師事したという事実は、彼の音楽への幅広い探求心を示しています。

彼の音楽観は、「その時々を生きている人間の喜怒哀楽などの感情を音に乗せて表現すること」です。西洋音楽の模倣にとどまらず、地域文化の融合や伝統音楽と現代音楽の融合など、「新しい独自の音楽」の創造・発信を重視しています。これは、これからの日本の音楽教育において非常に重要な考え方と言えるでしょう。

教育者としての貢献

帰国後は熊本音楽短期大学の教授・副学長を経て、2001年に同短大が4年制大学に改組された際に平成音楽大学学長に就任。2005年には学校法人御船学園理事長にも就任（2021年退任）しました。

学長として、彼は「礼儀・挨拶・感謝」「音楽の楽しさ」「日々努力」「何事にも対応できる適応力」といったことを学生に重視する一方、大学運営では熊本地震からの復興、少人数教育、資格取得支援、演奏会や海外視察などの充実などに尽力しました。2020年には、教育分野への貢献により藍綬褒章を受章しています。

幅広い作曲活動

作曲家としての活動も多岐に渡り、熊本音楽短期大学によるニューヨーク・カーネギーホール公演（1997年）では作曲、音楽監督、指揮を務めました。交響詩曲「伊東マンショ〜時を超える祈り〜」はイタリア公演（2017年）も行われています。クラシック音楽にとどまらず、地元熊本を題材にした作品や、歌謡曲、ミュージカルなども手掛けています。代表作として、「行進曲『カーニバル』」「熊本民謡によるパラフレーズ」「歌劇『細川ガラシア』」「交響詩曲『火の国』」「ユア ハンド・マイハート」「オペラ『おてものバッテン嫁入り』」「ピアノ協奏曲『カプリチオ』」「歌謡曲『おもいで宝箱』」「オペラ『南風吹けば楠若葉』」「ファゴット協奏曲『さくら幻想曲（ファンタジー）』」「交響詩曲『伊東マンショ〜時を超える祈り〜』」「ミュージカル『砂浜のエレジー』」など、多くの作品を発表しています。

多彩な肩書きと家族

現在、平成音楽大学学長を務める傍ら、全国音楽療法士養成協議会会長、熊本県私立大学協会会長、熊本オペラ芸術協会会長などの要職も歴任しています。彼の父は音楽家で作曲家の出田憲二氏、長女はマリンバ奏者の出田りあ氏（平成音楽大学客員教授、ドイツ在住）です。義兄は故亀井隆一郎氏（舞踊家、バレエ演出家）でした。

まとめ

出田敬三氏は、作曲家、指揮者、教育者として多方面で活躍する稀有な存在です。彼の音楽活動は、西洋音楽の伝統を踏まえつつ、日本の文化や伝統音楽を取り入れ、新しい音楽表現を模索する姿勢に特徴があります。また、教育者としては、学生育成に情熱を注ぎ、音楽教育の未来を担う人材育成に貢献しています。彼の座右の銘である「日々努力、生涯現役」の通り、これからも音楽界、教育界で活躍が期待されます。

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