函館市交通局1000形電車

函館市交通局1000形電車は、1970年（昭和45年）から2010年（平成22年）にかけて函館市交通局（函館市電）で活躍した路面電車です。この車両は、老朽化した2軸単車300形の置き換えを目的として、東京都電7000形を譲り受け、整備したものです。

概要

1970年、函館市交通局は東京都電7000形10両を譲り受け、1000形（1001 - 1010号）として導入しました。これは、1934年（昭和9年）の函館大火からの復興時に木造二軸単車1形（ヨヘロ）を35両購入し200形（2代目）として導入して以来となる、都電からの車両導入でした。

譲渡当初、車両は都電時代のクリーム色にエンジ色の帯という塗装のままで、ツーマンカーとして運行を開始しました。しかし、翌年の1971年（昭和46年）にはワンマン化改造が実施され、前面の窓割り変更や集電装置のZ型パンタグラフ化などの改造が行われました。同時に、車体塗装も函館市電の標準色に変更されています。

しかし、搭載されていた電動発電機の不調や路線縮小による余剰、保守部品確保の困難さなどから、1985年（昭和60年）までに3両を除いて廃車となりました。最後まで残った1006号も、2010年（平成22年）3月に廃車となり、形式消滅しました。

沿革

製造から函館市譲渡まで

都電7000形は、1955年（昭和30年）に二次車として20両（7031 - 7050号）が日本車輛製造・日本車輛東京支店・東急車輛・日立製作所で製造されました。制御方式は、一次車と同じ直接制御ではなく、間接制御（間接非自動制御）が採用されました。また、制御器の電源として電動発電機（MG）が搭載されましたが、そのメーカーは東芝、日立製作所、東洋電機の3社に分かれるなど、試作的な要素が強いグループでした。

主電動機は、当初出力52kWのND52が搭載されていましたが、後に7500形と同じ出力60kWのNE60に換装されています。

都電の路線縮小と前述の試作的要素の強さから、1970年（昭和45年）1月に10両（7032 - 7034・7036 - 7042号）が廃車となり、全車が函館市交通局に譲渡されました。一両あたりの車両価格は45万円でした。北海道への輸送は、品川埠頭から貨物船で行われました。

函館市電譲渡後

1000形は、1001 - 1010号として、譲渡翌月の1970年3月から運行を開始しました。本形式の定員96名は、譲渡当時函館市電で最大でした。

1971年（昭和46年）3月には、函館市電のワンマン化計画により、1010号を除く全車にワンマン化改造が施工されました。改造では、ワンマン機器設置の他、集電装置がビューゲルからZ型パンタグラフに交換され、前面窓配置もHゴム固定の非対称・変則2枚窓となりました。塗色は上半部アイボリー・下半部アイスランドグリーンの函館市電の当時の標準色に変更されました。同年10月には、全車に対して暖房装置（灯油燃焼式）が取り付けられました。

しかし、電動発電機の不調が相次ぎ、1971年（昭和46年）8月に1010号が、1973年（昭和48年）10月には4両（1001 - 1003・1009号）が廃車となりました。

度重なるMGの不調や高速走行時の横揺れが問題となり、1985年（昭和60年）まで指定留置車として駒場車庫に長期間留置されました。この間路線縮小による余剰車と予備部品確保のため、1979年（昭和54年）3月に1004号、1985年5月に1005号が廃車となりました。このうち、1005号は廃車の際に1007号と車番を交換しています。

1985年に指定留置車から解除された3両（1006 - 1008号）は運用復帰後、広告車両として活躍しました。1989年（平成元年）時点では、在来車と比較して主電動機出力が高く、下り勾配区間で抵抗器を痛める恐れがあることから、原則として急勾配が続く谷地頭 - 宝来町に入らない運用に用いられていました。

1007号は、1993年（平成5年）に「函館都電倶楽部」が中心となり、東京都電時代の塗装（クリーム地にエンジ帯）へと塗り替えられました。2000年（平成12年）12月から暫くの間、「はこだてクリスマスファンタジー」関連の塗装に変更されたものの、期間終了後に都電色に再復元され、廃車となるまで都電色で運行されました。

終焉

2007年（平成19年）3月に老朽化のため1007・1008号が廃車となりました。最後まで残った1006号は2009年（平成21年）に都電時代の塗装へと塗り替えられましたが、2010年（平成22年）3月に9600形9602号と入れ替わる形で廃車となり、形式消滅しました。

保存車

1006号が廃車後も駒場車庫で保管されていましたが、2013年（平成25年）3月に函館酪農公社がパンタグラフや台車部分を除く車体部分のみを一般競争入札で売却しました。函館市内の「あいす118」駐車場に保存され、2015年頃には台車も付いた状態となりましたが、塗装の塗り替え等は行われず錆が目立っていました。2019年頃に解体、撤去されました。

また、1985年に廃車となった1005号（二代目、元1007号）の運転台カットボディーが駒場車庫内に保存されていました。

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