分収林

分収林とは

分収林（ぶんしゅうりん）とは、森林の所有と経営を分離し、それぞれの権利者が収益を分け合う仕組みです。具体的には、森林の土地所有者は土地を、森林経営者は樹木を所有し、経営によって得られた収益を事前に取り決めた割合で分配します。この制度は、土地はあっても経営の意欲や技術がない所有者と、逆に意欲や技術はあるが土地がない経営者の間で、古くから行われてきました。土地と樹木を媒介とした投資信託のような側面も持ち、過去には大きな利益を上げた事例もありましたが、元本割れを起こし裁判に発展したケースもあります。

分収林の種類

分収林には、いくつかの種類があります。

分収造林: これは最も一般的な形態で、伐採跡地を対象に、土地所有者と森林経営者の間で契約を結びます。場合によっては、経営者への資金援助者を加えて3者で契約することもあります。
部分林: これは国有林内に設定される分収林で、国有林野の管理経営に関する法律に基づいて管理されます。
吉野の借地林業: スギのブランド産地である奈良県南部の吉野地域では、土地所有と森林経営を分離した分収林方式が盛んです。経営者は「山守」と呼ばれる現場代理人を雇い、遠隔地からでも経営が可能となっています。この仕組みは、後述の拡大造林政策における分収林方式にも影響を与えました。
分収育林: これは生育途上の若い森林を対象としたもので、育林地所有者、育林者、費用負担者の間で契約を結び、収益を分け合います。国有林野事業においては、「緑のオーナー」と呼ばれる費用負担者が育林費の一部を負担し、国と収益を分け合う形式が取られていました。
社寺保管林: 江戸時代に社寺が所有していた森林が、明治時代に国有化された後、一部が分収林として管理されました。これらの森林は、第二次世界大戦後に政教分離原則によって清算されました。

拡大造林政策と分収林

戦後の日本では、拡大造林政策の一環として、広葉樹林を伐採して針葉樹の人工林に転換する動きが盛んになりました。この際に、分収造林の仕組みが広く用いられました。1958年には分収林特別措置法が制定され、国や都道府県が地上権を持ち、土地を民間から無償で借り受けて造林を行う官行造林・県行造林が推進されました。これにより、土地所有者は植栽や間伐の費用負担なしに、将来的に価値の出る針葉樹林を手に入れることができました。

しかし、木材価格の下落と人件費の高騰により、伐採後の売却益が育成費用を下回るケースが増え、国や自治体の赤字経営が問題視されるようになりました。多くの公社が解散し、経営は県に移管されています。現在では、分収割合の見直しや契約解除、他の事業での利益確保など、様々な立て直し策が講じられています。

分収林を巡る問題点

分収林には、以下のような問題点があります。

元本割れ: 特に「緑のオーナー」制度では、木材価格の低迷により元本割れが発生し、訴訟に発展するケースが相次ぎました。
不適切な森林管理: 適切な時期に間伐などの手入れが行われず、価値の低い森林になるケースが見られます。また、契約内容が不明確なため、土地所有者と経営者の間でトラブルが発生することもあります。
赤字経営: 木材価格の低迷や人件費の高騰により、国や自治体が分収林経営で赤字を抱えるケースが増えています。

まとめ

分収林は、森林資源の有効活用と林業の振興に貢献してきた一方で、様々な問題も抱えています。今後、分収林制度をどのように改善していくかが課題となっています。

関連項目

林野庁
森林整備法人
分収林特別措置法
国有林野の管理経営に関する法律
学校林
入会地

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