グールド・ベルト

グールド・ベルト（Gould Belt）

私たちの銀河系、天の川銀河の中には、星々がある種の不完全な環状に集まった特別な領域が存在します。これが「グールド・ベルト」と呼ばれています。この構造は、およそ3000光年もの広がりを持ち、銀河系の主要な面（銀河面）に対して16度から20度ほどの角度で傾いているという特徴があります。これは、銀河系の腕としては比較的珍しい傾きです。

グールド・ベルトは、特に高光度で若いO型やB型といった主系列星を多く含んでおり、太陽系が現在位置している銀河系の腕の一部、すなわち「局所的な渦状腕」にあたるのではないかと考えられています。私たちの太陽系は、偶然にもこのグールド・ベルトの中に位置しており、その中心から約325光年ほど離れた場所にいます。

この領域に存在する星々の年齢から、グールド・ベルトは比較的新しい構造であり、おおよそ3000万年から5000万年前の間に形成されたと推測されています。しかし、この特徴的な構造がどのようにして生まれたのか、その正確な起源については、まだ明らかになっていません。

その名称は、1879年にこの星の集まりを発見し、その存在を示唆したアメリカの天文学者、ベンジャミン・グールド氏の功績を記念して名付けられました。

グールド・ベルトは、夜空で見られる多くの明るい恒星を含んでおり、いくつかの主要な星座を横断しています。具体的には、以下の星座に見られる明るい星々がこの領域に含まれています。

ケフェウス座
とかげ座
ペルセウス座
オリオン座
おおいぬ座
とも座
ほ座
りゅうこつ座
みなみじゅうじ座
ケンタウルス座
おおかみ座
さそり座（さそり-ケンタウルスOBアソシエーションを含む）

天の川もこれらの星座のほとんどを通っていますが、おおかみ座の領域ではわずかに南東にずれて見えます。これは、グールド・ベルトが銀河面から傾いていることと関連しています。

また、グールド・ベルトには、天文学的に非常に重要な多くの星形成領域やOBアソシエーションが含まれています。これらは、新しい星が誕生している活発な領域であり、グールド・ベルトの比較的新しい年齢を示唆する証拠ともなっています。

例としては、以下のような領域が挙げられます。

オリオン大星雲とオリオン座分子雲
さそり-ケンタウルスOBアソシエーション
Serpens-Aquila RiftとW40
Cepheus OB2
Perseus OB2
おうし座分子雲

グールド・ベルトの形成メカニズムについては様々な説が提唱されていますが、有力な仮説の一つとして、2000年代後半に提案されたモデルがあります。この説では、約3000万年前にダークマターの小さな塊が分子雲と衝突した結果、この環状構造が形成された可能性が指摘されています。この説は、グールド・ベルトの年齢や形状をうまく説明できるとされています。

興味深いことに、私たちの銀河系だけでなく、他の銀河にもグールド・ベルトに似た構造が存在するという観測的な証拠も見つかっており、このような星の分布パターンが普遍的な現象である可能性も示唆されています。

もう一度検索