分格

分格：一部分を表す格

分格とは、文法上の格のひとつで、動作の対象となるものが全体ではなく一部分であることを示す格です。対格が動作の対象全体を表すのに対し、分格は対象の一部、あるいは不定量を表す点が大きな違いです。特に否定文において頻繁に用いられるのが特徴です。

フィンランド語における分格

フィンランド語では、格語尾を用いて分格を表します。具体的な語尾は、単語の母音によって変化し、`-ta/tä`, `-a/ä`, `-tta/ttä` などが用いられます。現代フィンランド語では、分割可能な不定量のものに対して用いられることが多く、対格と比較すると、不完全な動作や継続中の動作を表す傾向があります。また、否定文の目的語には必ず分格が用いられます。

例：`Mikko söi kanaa.`（ミッコは鶏を（一部分）食べた）

この例文では、`kanaa`（鶏）が分格で用いられており、ミッコが鶏全体ではなく、一部を食べたことを示しています。

バスク語における分格

バスク語では、`-(r)ik`という語尾を付けることで分格を表します。フィンランド語と同様に、否定文で頻繁に用いられます。また、対象が不定の場合にも用いられる点が特徴です。

例：`Ez dut ogirik.`（私はパンを持っていない）
例：`Ah, dirurik banu.`（ああ、私にお金があったらいいのに）

これらの例文はどちらも否定文であり、`ogiriik`（パン）と`dirurrik`（お金）は分格です。

インド・ヨーロッパ語族における分格

インド・ヨーロッパ語族の言語には、フィンランド語やバスク語のような専用の分格はありません。しかし、属格の中に「部分属格」と呼ばれる、分格と同様の機能を持つ用法があります。

ロシア語における部分属格

ロシア語では、動作が事物の一部のみを対象とする場合、または不定量を対象とする場合に、生格（属格）が分格と同様の機能を果たします。特に完了動詞の直接目的語として用いられることが多いです。また、否定文では、対格を取る動詞が否定文になると、対格ではなく生格（部分属格）を取ることも一般的です。存在の否定も生格で表されます。

例：`Принесите воды.`（水を少し持ってきてください）
例：`У меня нет денег.`（私はお金を持っていない）
例：`Он не знал радости.`（彼は喜びを知らなかった）

これらの例文において、`воды`（水）、`денег`（お金）、`радости`（喜び）は生格で、それぞれ一部分、不定量、または否定された対象を表しています。

フランス語における部分冠詞

フランス語の部分冠詞（de + 定冠詞）も、分格とよく似た役割を果たします。対象の一部、または不定量を表す際に用いられ、分格が存在しないフランス語において、分格に相当する機能を提供しています。

まとめ

分格は、様々な言語に見られる文法上の格で、「一部分」を表す機能を持ちます。言語によって表現方法は異なりますが、否定文との関連が深く、対象が全体ではなく一部であることを示す重要な役割を果たしています。フィンランド語、バスク語、ロシア語の例から、その多様な表現方法と共通点を理解することが重要です。また、フランス語の部分冠詞も分格と同様の機能を持つことを理解することで、分格の概念をより深く理解することができます。

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