刈屋他人次郎

刈屋 他人次郎

（かりや たにんじろう、かりや よそじろう）

日本の数学者、陸軍教授。1874年に生まれ、1921年1月6日に死去。

生涯とキャリア

1874年、岩手県の士族の家系に生まれる。青年期には学問を志し、1896年に第二高等学校第二部理科を修了後、東京帝国大学理科大学数理科に進学した。

大学卒業後の1900年には、東京大学院に理学士として入学し、解析学を専門分野として深く研究を進めた。この頃、学術分野の発展に貢献する学士会にも入会している。

研究と並行して、教育者および陸軍の専門家としての道を歩み始める。1901年には高等官七等に叙せられ、同年10月8日には陸軍砲工学校の陸軍教授に任じられた。これは、陸軍における技術教育において数学の専門家が必要とされていたことを示している。陸軍教授として、砲工学校で数学教育に尽力したほか、1904年には陸軍省の職務にも関わっている。

陸軍での勤務の傍ら、一般の教育機関でも教鞭を執る機会があったようで、日本女学校、東洋協会専門学校、台湾協会学校といった教育機関でも教育活動を行った記録が残されている。

業績

数学者としての最も特筆すべき業績として、「刈屋の定理」の発見が挙げられる。この定理は特定の数学分野における重要な知見であり、彼の名を学術史に刻むこととなった。

また、教育者として多数の数学に関する著作を残している。特に、当時の学校教育で用いられる教科書や参考書を多く手掛けており、藤田外次郎や野原休一、林鶴一といった他の数学者との共著も少なくない。

主な著作には以下のようなものがある。

藤田外次郎共著『初等微分積分学』（1902年）
野原休一共著『算術教本』（1902年）
『新撰応用重学』（1904年）
野原休一共著『新編初等重学』（1904年）
野原休一共著『算術新教本』（1905年）
林鶴一共著『公算論 : 「確カラシサ」ノ理論』（1908年）
林鶴一共著『不等式』（1910年）
『平面解析幾何学講義』（1910年）
『重学講義』（1912年）
『師範教科新算術』（1918年）
『女子教科新算術』（1918年）
『中学校用新算術』（1918年）
佐藤林蔵共著『実用工業数学』（1921年）
『最小自乗法講義』（1929年） ※没後刊行
* 藤田外次郎, 梶島二郎共著『数学公式』（1944年） ※没後刊行

これらの著作は、当時の数学教育の水準向上に貢献したと考えられている。

栄典

陸軍教授という立場で、文官として様々な栄典を授与されている。位階は従七位から始まり、没年には正五位に達した。また、高等官としても七等から四等へと昇進している。さらに、勲六等、勲五等、勲四等の瑞宝章を受章しており、国家に対する貢献が評価されたことを示している。

1921年1月6日、46歳あるいは47歳でその生涯を閉じた。短命ではあったが、数学者、教育者として日本の近代数学の発展と教育に貢献した人物である。

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