台湾協会学校

台湾協会学校：拓殖大学の源流

台湾協会学校は、日清戦争後の台湾における日本の植民地経営を担う人材育成を目的に設立された学校で、現在の拓殖大学の前身です。その設立から大学への昇格、そして現在に至るまでの歴史を詳しく見ていきましょう。

設立の背景と概要

1898年に設立された台湾協会は、台湾の「拓殖経営に資する機関」として学校設立を計画。1900年6月には学校設立が認可され、同年9月に和仏法律学校（現在の法政大学）の仮校舎で開校しました。

当時の入学資格は中学卒業程度で、修業年限は3年間、学生定員は300名でした。

沿革

1900年
6月：台湾協会学校の設立認可。
9月：和仏法律学校の仮校舎で開校。
1901年
5月：松崎蔵之助が初代学監に就任。
8月：専修学校（現在の専修大学）を仮校舎として移動。
11月：小石川区茗荷谷町（現在の拓殖大学文京キャンパス）に校舎を構える。
1903年
第1回卒業式を挙行（卒業生45名）。
1904年
専門学校令に基づき、台湾協会専門学校に改称。
1907年
1月：台湾協会が東洋協会に改称。
10月：東洋協会専門学校となる。京城（現在のソウル）に分校を開設。
1909年
同窓会を創立、同窓会会報創刊号を発行。
1910年
東洋協会旅順語学校・同大連商業学校を開校。
1912年
4月：明治天皇より恩賜金を拝受。
9月：小松原英太郎が第2代校長に就任。
1914年
3月：恩賜記念講堂の落成式を挙行。
7月：東洋協会が社団法人に改組。
1915年
東洋協会植民専門学校と改称。
1917年
新渡戸稲造が第2代学監に就任。
1918年
専門学校令に準拠し、拓殖大学と改称。京城分校は東洋協会京城専門学校として分離。
1919年
2月：後藤新平が第3代学長に就任。
11月：校歌を制定。
1922年
大学令に基づく東洋協会大学の設立が認可（専門学校令準拠の拓殖大学は1925年まで存続）。
1925年
専門学校令準拠の拓殖大学を東洋協会大学専門部（夜間）に改組。
1926年
東洋協会大学を拓殖大学と改称。

大学昇格への道のり

1919年に第3代学長に就任した後藤新平は、大学令に基づく大学への昇格という難題に直面します。当時、私立の専門学校が大学として認可されるには、財団法人化、50万円の供託金納付、高等学校と同水準の予科設置、専任教員の確保、教育研究に必要な設備整備など、厳しい条件を満たす必要がありました。

特に大きな課題であった供託金問題に対して、後藤は台湾の各製糖会社に協力を要請し、目標額の50万円を調達することに成功しました。

塩水港精糖：20万円
東洋精糖：7万5千円
台湾製糖：7万5千円
大日本製糖：7万5千円
明治製糖：7万5千円

1920年11月11日に東洋協会大学の設立認可申請を行い、約1年半の審査を経て、1922年6月5日に認可されました。これにより、1922年4月入学の学生は東洋協会大学の予科1年に編入されましたが、専門学校令準拠の拓殖大学は在籍者が卒業するまで存続しました。そのため、1925年3月まで校門には「東洋協会大学」と「拓殖大学」の二つの校名が掲げられていました。

東洋協会大学には適切な略称がなかったため、校名を再び拓殖大学に戻す動きがあり、1926年7月1日の評議員会で校名変更が決議され、同年12月8日に文部省の認可を受け、東洋協会大学の歴史はわずか4年半で幕を閉じました。

主な教員

桂太郎（初代校長、台湾協会会頭）
小松原英太郎（第2代校長）
後藤新平（第3代学長）
松崎蔵之助（初代学監）
新渡戸稲造（第2代学監）
河合弘民（京城分校主任）
元田作之進（英語、立教大学学長）
中村進午（国際法）
刈屋他人次郎（数学）
田尻稲次郎（経済学）
水崎基一（植民史）
古城貞吉（漢文）
勝田主計（関税論）
足立忠八郎（中国語）
金国璞（中国語）
謝介石（台湾語、満洲国外交部長）

著名な出身者

井上日召 - 政治運動家（中退）
大関善雄 - 台湾総督府官僚
桑原政夫 - 台湾総督府官僚
近藤銕次 - 実業家、貴族院議員
中村知 - ボーイスカウト指導者
宮原民平 - 拓殖大学教授
米内山震作 - 関東州官僚
脇光三 - 日露戦争時の特務機関員（中退）

校地の変遷と継承

開校当初は校舎を持たず、和仏法律学校の校舎を間借りして授業を行っていました。その後、小石川区茗荷谷町に校地を取得し、新校舎を建設。この校地は、現在の拓殖大学文京キャンパスとして受け継がれています。

まとめ

台湾協会学校は、その後の拓殖大学へと繋がる重要なルーツであり、日本の植民地政策における人材育成に大きな役割を果たしました。その歴史は、日本の近現代史を理解する上で欠かせない要素の一つです。

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