刑事補償請求権

刑事補償請求権について

刑事補償請求権（けいじほしょうせいきゅうけん）とは、抑留または拘禁された者が無罪判決を得た場合に、国家に対してその補償を求める権利のことです。この権利は、法治社会における基本的な人権の一つと位置づけられています。

憲法における位置づけ

この権利は、日本国憲法では第40条に規定されていますが、他国の憲法でも類似の規定が存在することがあります。例えば、イタリアの憲法第24条第4項や、国際的な人権規約である市民的及び政治的権利に関する国際規約第14条第6項でも、無罪の者に対する補償請求権が認められています。

日本の歴史的背景

大日本帝国憲法（明治憲法）には、刑事補償請求権に関する規定が存在しませんでした。しかし、日本国憲法の成立以降、刑事補償請求権が明文化されたことで、立法上の重要性が高まったと言えます。また、刑事補償法が1931年に制定されたことにより、具体的な補償手続きが整備されました。

意義と法的根拠

日本国憲法第33条に基づき、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合」において、その身柄の拘束は正当な行為とされています。しかし、無罪判決に至った場合、その拘束行為が直ちに違法となるわけではありません。最高裁判所の判例も、こうした見解を支持しています。にもかかわらず、身柄の拘束が不当であった事実から、憲法第40条に基づいて補償請求権が認められる仕組みとなっています。

補償請求権の要件

刑事補償請求権を行使するためには、無罪の裁判を受けたことが要件となります。この「無罪の裁判」とは、刑事訴訟法による通常手続や再審、非常上告手続において無罪となった場合を指します。ただし、犯罪後に法律が変更されて刑が廃止されたために免訴となった場合や、少年審判における不処分決定は、無罪の裁判には含まれません。

さらに、起訴されずに釈放された場合も、無罪判決を得たこととは見なされませんが、社会的な正義や衡平の観点から補償が求められる場合もあります。こうしたケースについては、刑事補償法には具体的な規定が設けられていないものの、法務省の訓令に基づいて補償の基準が示されています。

まとめ

刑事補償請求権は、無実の罪で拘束された者が国家に対して持つ重要な権利です。この権利が保障されることで、法律の下での公正が確保され、個人の尊厳が保たれるとともに、国に対する信頼が築かれることが期待されています。法制度の中でこの権利をいかに実現していくかは、今後の課題であると言えるでしょう。

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