非常上告

非常上告（ひじょうじょうこく）についての解説

非常上告とは、日本の刑事訴訟法において、検事総長が最高裁判所に対して提出する申立てのことを指します。この制度は、刑事事件において確定した判決が法令に違反していると認められる場合、その不適切な判断を取り消すことを目的としています。具体的には、刑事訴訟法第454条に基づいて行われます。

非常上告の重要性

通常、判決に明白な誤りがあった場合でも、当事者が上訴しない限りはその誤りを修正することはできません。しかし非常上告は、当事者の意思に関係なく原判決を破棄することが可能で、その点において大きな意味を持ちます。たとえば、法律では最高刑が罰金10万円と定められているのに対し、判決が罰金20万円となり、被告人が控訴や上告を行わずに判決が確定した場合でも、非常上告によってその判断を覆すことができます。

受理件数とその傾向

毎年の新規非常上告の受理件数は、通常は1桁程度で推移していますが、特定の年に極端に多くなることがあります。その理由の一つは、特定の事件や誤りが明るみに出た際に続けて申立てが行われるからです。

過去の事例を挙げると、2004年から2009年にかけて発生した速度違反に関する事件があります。北海道室蘭市や山梨県南アルプス市、佐賀県唐津市の警察官が自動車専用道路と一般道路を誤認し、243件もの違法な略式命令による罰金判決が確定していたことが原因で、非常上告の申立てが相次ぎました。結果的に、2010年にはすべての略式命令が取り消され、公訴棄却となりました。

さらに、2011年から2012年にかけては大分地方検察庁の検察事務官による権限のない事件処理が発覚し、164件の事件の一部が非常上告の対象となりました。この事案は多くのメディアに取り上げられ、大きな社会問題となりました。

最近の事件としては、2023年に福井県で発表された検察事務官による権限の誤用があり、これも非常上告の申し立てが行われ、公訴棄却の判決が出されています。さらに、2023年には松江地方検察庁において、適切な手続きが行われないまま制限速度標識が設置され、速度違反が取り締まられた件も非常上告を引き起こしました。

結論

非常上告は、法令に違反している確定判決を見直すための重要な手続きです。これにより、法的な誤りを正すことができ、法治主義の観点からも非常に重要な役割を果たしています。これまでに多くの事例があり、その都度新たな課題が浮き彫りになっています。今後も、法的手続きとしての非常上告の重要性は変わらず、さらなる厳密な運用が求められるでしょう。

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