列車砲

列車砲の概要

列車砲とは、大型の砲を鉄道車両に搭載し、線路を走行させることで移動と射撃を実現する兵器です。一般的な貨物列車に装甲を施し、軽装備の砲を搭載した装甲列車とは異なり、列車砲は非常に大きな口径の砲を使用しており、特に大口径のカノン砲（カノン・加農）や榴弾砲、臼砲が採用されました。これにより、特に長距離の攻撃が可能で、最大射程はなんと40キロメートルを超えるものもありました。

移動の際、列車砲は自走能力を持たず、機関車によって牽引されます。また、砲架が固定式であったり、360度の旋回ができないため、左右の射界を確保するためにはレールのカーブを利用したり、転車台を使ったりする必要があります。ただし、この制約を考慮しても、当時の鉄道網が発達していたため、他の移動手段と比べると迅速に展開することができました。

列車砲の運用と戦術

列車砲はその強力な攻撃力を持ちながらも、運用には多くの人員が必要です。移動には機関車や工兵隊、さらには防空のための部隊が必要であり、これらの部隊の後方支援も重要です。長大で大口径の砲身を持つため、その整備や交換にも多くの時間と資源が要求されました。列車砲を運用する際は、特に敵の対抗火力を警戒する必要があり、射撃した後は素早く移動し、隧道を利用して敵の反撃を回避する戦術もとられました。

戦間期には中型・大型の爆撃機が列車砲の威力を上回る爆弾を投下できるようになりましたが、当時の航空機は全天候での行動に限界があり、照準精度も低かったため、列車砲が持つ威力が完全には失われませんでした。適切な条件下で使用する限り、列車砲は依然として強力な兵器として機能する場面もありました。

歴史

列車砲の起源は1853年にイギリスで提案され、1860年代にはロシアでも同様の考えが現れました。南北戦争中の1864年には、北軍によって初の実用化がなされ、13インチ列車臼砲が運用されました。

第一次世界大戦では、ドイツが強力な列車砲を開発し、これを使用して要塞や塹壕を攻撃しました。特に有名なのはパリ砲で、130キロメートル以上の距離からパリを攻撃しました。この戦争後、世界中で列車砲の研究が進みました。

第二次世界大戦においても、ドイツ、イギリス、ソ連などが列車砲を運用しました。ドイツは「グスタフ」と「ドーラ」という80センチの列車砲を投入し、その威力は圧倒的でした。しかし、戦後の弾道ミサイルの開発によって、列車砲は急速に時代遅れとなり、その存在意義は低下しました。

一方で、現代でも列車移動が可能な弾道ミサイルが開発されていることから、列車砲の後継として捉えることもできる現象が見られます。こうした歴史を通じて、列車砲は強力で特異な兵器の地位を確立したものの、技術の進化によりその運用は次第に減少する運命を辿りました。

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