初恋 (宇多田ヒカルの曲)

宇多田ヒカル「初恋」：普遍的な愛を歌う、時代を超えた名曲

宇多田ヒカルの「初恋」は、2018年5月30日に配信限定シングルとしてリリースされ、7thアルバム『初恋』の表題曲にもなった楽曲です。TBS系ドラマ『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』のイメージソングとして書き下ろされました。この曲は、宇多田ヒカルが2007年放送のドラマ『花より男子2(リターンズ)』に「Flavor Of Life -Ballad Version-」を提供して以来、11年ぶりに『花より男子』シリーズと再びタイアップした作品でもあります。

制作の背景

ドラマのイメージソング制作にあたり、宇多田ヒカルは原作を読み込みました。高校生の恋愛を描いた学園ものであるものの、テーマは普遍的であり、年齢や性別を問わず共感できる部分が多いと感じたそうです。社会や他者との関わりの中で感じる摩擦や、自分の本質と向き合う登場人物たちの姿が、自身の音楽の主題と重なる部分があったと語っています。タイトルについては、アルバムタイトルを考えている最中に「『初恋』で良いんじゃないか？」と思い至ったことがきっかけで決定しました。

レコーディング

レコーディングでは、当初生ドラムを試したもののうまくいかず、最終的にはデモと同じようにドラムレスの構成となりました。エンジニアのスティーヴ・フィッツモーリスが、サム・スミスのライブでティンパニーを使用した経験から、「初恋」でもティンパニーを試したところ楽曲に非常にマッチし、採用に至りました。ギターに関しても、宇多田ヒカルはギタリストのベン・パーカーに「ギターっぽくないように」「ハープっぽく」という指示を出し、試行錯誤を重ねたそうです。ピアノは、後に宇多田ヒカルのツアーにも参加するヴィンセント・テレッレが演奏しています。

音楽性と歌詞

「初恋」は、ドラムやベースなどのリズム楽器を一切使用せず、ボーカル、ピアノ、ストリングスを主体としたシンプルな構成が特徴です。サビの三連符を軸とした譜割りも印象的です。歌詞については、作詞家のいしわたり淳治が、<もしも あなたに出会わずにいたら 誰かにいつかこんな気持ちに させられたとは思えない>という一節を「秀逸なキラーフレーズ」と評価しています。宇多田ヒカル自身も、「恋の始まりとも終わりともとれるように書きました」と語っており、初恋という感情が持つ多面性を表現しています。

リリースとプロモーション

「初恋」は、iTunes Store、mora、レコチョクで配信リリースされ、ミュージックビデオも公開されました。アルバム『初恋』のリリース時には、MUSIC ON! TVでMVの制作過程に密着したドキュメンタリー番組が放送されました。また、NHK『SONGSスペシャル 宇多田ヒカル』やTBS『音楽の日』などのテレビ番組にも出演し、楽曲を披露しました。

ライブでの披露

宇多田ヒカルの国内ツアー「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」でも披露され、終盤の歌詞の後、約10秒間の静寂を挟む演出が大きな話題となりました。

評価と受賞

「初恋」は、川谷絵音や蔦谷好位置、いしわたり淳治など、多くのミュージシャンや音楽プロデューサーから高く評価されました。シンプルな構成でありながら、宇多田ヒカルの歌声とメロディの力強さが際立っている点や、日本語の美しさを活かした歌詞などが評価されています。第33回日本ゴールドディスク大賞では、「ベスト5ソング・バイ・ダウンロード」を受賞しました。

チャート成績

オリコン週間デジタルシングルランキングで2週連続1位を獲得するなど、チャートでも好成績を収めました。日本レコード協会からはプラチナ認定を受けています。

ミュージックビデオ

「真夏の通り雨」のMVも手掛けた柘植泰人が監督を務めました。宇多田ヒカル自身も出演し、感情の内側の動きを光と影で表現した映像美が印象的な作品です。

Netflixオリジナルドラマ

「初恋」と「First Love」（1999）にインスパイアされたNetflixオリジナルドラマ『First Love 初恋』が制作され、2022年に全世界同時配信されました。

「初恋」は、宇多田ヒカルの音楽家としての才能が凝縮された、時代を超えて愛される名曲です。普遍的な愛の感情を繊細に描き出し、聴く人の心に深く響く作品と言えるでしょう。

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