Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018

宇多田ヒカル Laughter in the Dark Tour 2018：20周年を飾る革新的な全国ツアー

『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』は、宇多田ヒカルがデビュー20周年を記念して2018年に行った全国ツアーです。2018年11月6日から12月9日まで、全6都市12公演で開催され、約14万人を動員しました。12年ぶり3度目の国内ツアーとなった本公演は、音楽史に残る革新的な試みと、宇多田ヒカルのアーティストとしての進化を示すものとなりました。

ツアーの背景

2017年12月、新曲「あなた」のリリースを控えた宇多田ヒカルは、翌年の全国ツアー開催を発表しました。2018年4月にはツアー日程が発表され、6月には7thアルバム『初恋』をリリース。アルバムにはツアーの先行応募券が封入され、9月には正式名称が発表されました。

ツアー開幕直前の11月には、アルバム収録曲「Too Proud」のリミックスがサプライズリリース。活動休止前最後のライブ会場となった横浜アリーナからツアーがスタートし、デビュー20周年の記念日である12月9日に幕張メッセでファイナルを迎えました。

ツアーの模様は、2019年1月にBSスカパー！で放送され、3月にはMUSIC ON! TVでツアードキュメンタリーを加えた完全版が放送されました。

タイトルに込められた意味

ツアータイトル『Laughter in the Dark』は、宇多田ヒカルが敬愛するロシアの作家ウラジーミル・ナボコフの小説「カメラ・オブスクーラ」の英題に由来します。ライターの山田宗太郎は、宇多田ヒカルが曲間をシームレスに繋いだり、既存の楽曲をモッシュアップしたりする手法が、ナボコフが自作を再英訳する際に設定を変更したり、大胆な削除や書き換えを行った点と共通していると指摘しています。つまり、宇多田ヒカルは過去の作品を新たな作品へと昇華させているのです。

革新的な施策

電子チケットと本人確認システム

本ツアーでは、転売防止と入場時の混雑緩和のため、電子チケット方式が採用されました。入場時には顔写真による本人確認が行われ、事前に顔写真の登録が必要となりました。また、チケット購入後のキャンセルに備え、定価でチケットを譲渡できるシステムも導入されました。これらの施策により、大規模な公演でありながら、入場時間を大幅に短縮することに成功しました。

SNSでの撮影解禁

SNSの普及を受け、本ツアーではスマートフォンでの写真・動画撮影が解禁されました。ただし、一眼レフカメラや録音専用機材の使用、フラッシュ撮影は禁止されました。

グッズの事前販売

会場で販売されるグッズは、事前にネットで購入できるシステムが導入されました。これにより、当日のグッズ販売列に並ぶ必要がなくなり、スムーズに商品を受け取ることが可能になりました。

ライブの評価

Real Soundの荻原梓は、ライブが「完全な静寂から始まった」点を指摘し、「初恋」での静寂を「この日一番の"間"」と評価しました。音楽評論家の柳樂光隆は、バンド形態でのライブによって宇多田ヒカルの作編曲家としての独自性が際立っていたと指摘し、ローリングストーンジャパンの記事にて「宇多田ヒカルは『今』が最も輝いているタイプの音楽家だ」と語りました。ライターの三宅正一は、CINRA.NETにて、同ライブに「緊張と緩和」の連続を見出し、「真摯な音楽表現者の生き様を映し出す空間がそこにはあった」と評価しました。

セットリストと演出

今回のライブでは、小袋成彬が曲順やアレンジを担当しました。2ndアルバム『Distance』からは1曲も選曲されませんでしたが、「Kiss & Cry」の曲中で「Can You Keep A Secret?」のコーラス部分が歌われました。

参加アーティスト

又吉直樹: ショートフィルムに登場し、脚本も担当。
高瀬譜希子: コンテンポラリーダンサー。「ともだち」と「Too Proud」でダンスを披露。
* バンドメンバー: ジョディ・ミリナー（ベース）、ベン・パーカー（ギター）、ヴィンセント・タレル（ピアノ、キーボード）、シルヴェスター・アール・ハーヴィン（ドラム）、ヘンリー・バウアーズ=ブロードベント（シンセサイザー、パーカッション等）、四家卯大ストリングス。

映像作品とVR体験

ツアーの模様は、『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』として映像化され、DVD/Blu-rayで発売されました。また、Netflixでも配信されています。完全生産限定パッケージには、ドキュメンタリー映像やミュージックビデオなどが収録されています。

さらに、「光」と「誓い」の2曲はPS VR向けに配信され、ライブ会場の臨場感をVRで体験できるようになりました。このVRコンテンツは、「ルミエール・ジャパン・アワード2019」のVR部門で特別賞を受賞しました。

まとめ

『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』は、宇多田ヒカルの20周年を記念するだけでなく、音楽業界におけるライブエンターテイメントの新たな可能性を示唆するものでした。革新的な技術、豪華なゲスト、そして宇多田ヒカルの圧倒的なパフォーマンスが融合した、記憶に残るツアーとなりました。

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