初春 (初代神風型駆逐艦)

「初春（はつはる）」は、かつて大日本帝国海軍に所属していた駆逐艦の一隻です。同型艦である神風型駆逐艦（初代）の計画において、23番目に建造された艦として位置づけられています。後に同名の駆逐艦「初春」が登場したことから、区別のために本艦は一般的に「初春（初代）」あるいは「初春I」と表記されることがあります。

本艦の建造計画は、1905年（明治38年）2月15日に「製造番号第23号」として正式な艦名「初春」を付与されたことから始まります。同年11月11日には、建造を担当した川崎造船所（現：川崎重工業）にて船体工事が開始されました（起工）。

船体は順調に組み上げられ、翌1906年（明治39年）5月21日には無事に進水式を迎えました。そのわずか3日後の同月24日には、正式に帝国海軍の駆逐艦籍に類別されました。そして、全ての建造工程を終え、海軍に引き渡されたのは1907年（明治40年）3月1日のことでした。これにより、「初春（初代）」は正式に帝国海軍の艦艇として就役しました。

竣工後、「初春（初代）」は様々な任務に就きました。特に、1914年に勃発した第一次世界大戦においては、遠く東南アジア方面、具体的にはシンガポール周辺の海域において重要な警備任務に従事しました。これは、同盟国であるイギリス帝国の要請や、日本の権益保護のため、帝国海軍が海外へ艦艇を派遣した活動の一環でした。

第一次世界大戦終結後も、「初春（初代）」の任務は続きました。ロシア革命後のシベリア出兵に関連する時期には、日本の安全保障上重要であった沿海州の沿岸地域において、警備活動を担いました。これらの活動を通じて、本艦は帝国海軍の沿岸警備や海外派遣における役割を果たしました。

長きにわたる現役任務を終えた「初春（初代）」は、その役目を終えることとなりました。1924年（大正13年）12月1日付けで、帝国海軍の軍艦籍からその名が削除されました（除籍）。さらに、船としての登録も廃止され、1926年（大正15年）6月16日には正式に廃船となりました。

廃船となった後も、その船体はしばらく存在していましたが、新たな用途が与えられることになります。1928年（昭和3年）7月6日には、一時的に「廃駆逐艦第4号」という仮称が付与されました。これは、解体や処分を待つ船体に対する便宜的な名称でした。

そして、その最終的な結末は訓練の標的となることでした。1928年8月13日、航空母艦「赤城」および「鳳翔」に搭載された艦載機、おそらくは攻撃機や爆撃機による実射訓練の標的として使用されました。正確な艦の位置は不明ですが、おそらくは日本近海で実施された訓練において、艦載機による爆撃を受け、波間に沈むこととなりました。これが、駆逐艦「初春（初代）」の約21年にわたる艦齢の幕を下ろした最期でした。

なお、本艦の艦長は、竣工から除籍までの期間、複数の海軍士官が務めました。彼らはそれぞれの在任期間において、「初春（初代）」の運用と任務遂行の責任を担いました。

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