初鹿野信昌

初鹿野信昌（はじかの のぶまさ）

生涯

初鹿野信昌は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将で、甲斐武田氏、そして後に徳川氏に仕えました。彼は加藤虎景の六男として生まれ、永禄4年（1561年）の第四次川中島の戦いで初鹿野忠次が戦死したため、初鹿野氏の名跡を継ぎました。

武田信玄、勝頼の二代に仕え、長篠の戦い以降は勝頼の側近として、跡部勝資、長坂光堅、土屋昌恒らと共に活躍しました。天正10年（1582年）の甲州征伐の際には、織田信長・徳川家康連合軍に対抗するため勝頼に合流しようとしましたが、領民に妻子を人質に取られたため、果たせませんでした。武田家滅亡後は徳川家康に仕え、小牧・長久手の戦い、小田原征伐、関ヶ原の戦い、大坂の陣などに従軍し、その武勇を示しました。

寛永元年（1624年）11月15日に死去しました。享年は81歳（『甲斐国志』）、84歳（『寛政重修諸家譜』）と諸説あります。子の信吉が後を継ぎ、家系は徳川家の旗本として存続しました。知行地は現在のさいたま市北区土呂町付近にあり、土呂陣屋跡地には土呂の地蔵堂が現存しています。また、慶長5年（1600年）に勧進した御嶽社（大宮区寿能町二丁目）も現存しており、彼の墓所も同地にあります。

人物

初鹿野信昌は、戦場において「香車伝右衛門」と呼ばれるほど、特徴的な陣羽織を着用していました。その陣羽織は、表が「香車」、裏が「成金」というものでした。この陣羽織に関する逸話が『関東古戦録』に記されており、三増峠の戦い（1569年）の際、彼が香車の文字を書いた羽織を着ていたため、仲間から「香車は二度と戻って来れないのに、なぜ帰陣したのか」とからかわれた際、羽織を裏返して「時が経って、金に成り変わった」と答えて、周囲を笑わせたという話が残っています。この逸話は、彼の機知に富んだ一面を物語っています。

初鹿野信昌は、武将としての勇猛さだけでなく、ユーモアのセンスも持ち合わせていた人物でした。その生涯は、戦国時代から江戸時代初期という激動の時代を、武将として、そして人間として、どのように生きたのかを教えてくれる貴重な事例といえるでしょう。

補足

初鹿野氏の家系: 初鹿野信昌の子孫は徳川家の旗本として続き、その血脈は現在にも受け継がれています。
知行地: 知行地の土呂町周辺には、彼の足跡をしのばせる史跡がいくつか残っています。地蔵堂や御嶽社は、地域の歴史を語る上で重要な存在です。
* 逸話: 香車の陣羽織のエピソードは、当時の武士たちのユーモアと機知に触れることができる興味深い話です。

このように、初鹿野信昌は、単なる戦国武将という枠を超え、その人間性においても魅力的な人物であったと言えるでしょう。

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