別府鉄道野口線

別府鉄道野口線：加古川を走ったローカル線の軌跡

兵庫県加古川市に存在した別府鉄道野口線は、昭和59年（1984年）2月1日の廃線によってその歴史に幕を閉じました。野口駅から別府港駅を結ぶ全長3.7kmの路線は、大正10年（1921年）9月3日、別府軽便鉄道として開業しました。当初は、別府港にあった多木化学（当時、多木製肥所）で生産された化学肥料の輸送が主な目的でした。

開業当初は、播州鉄道（後の播丹鉄道）と直通運転を行い、加古川駅まで乗り入れる4往復の列車が運行されていました。しかし、大正12年（1923年）に山陽本線と接続する土山線が別府鉄道によって開業すると、貨物輸送の中心は土山線に移り、野口線は旅客輸送が主体となる路線へと変化していきました。

昭和18年（1943年）に播丹鉄道が国有化されると、野口線との直通運転は廃止されました。戦後の昭和22年（1947年）に路線が再開された際には、野口駅に渡り線が設置されなかったため、貨物列車は運行されず、気動車による旅客列車のみが運行されました。

昭和44年（1969年）12月時点では1日10往復、所要時間11分。昭和59年（1984年）1月時点では1日9往復の旅客列車が運行されていました。野口駅で高砂線と接続する際の待ち時間は、最長でも1分程度だったと記録されています。

車両：時代を彩った気動車たち

野口線には、個性豊かな気動車が活躍していました。

キハ2: 昭和6年（1931年）製造の車両で、廃線まで使用され、独特のバケットカーとして人気を博しました。現在は円長寺駅跡付近の公園で保存されています。
キハ3: 昭和5年（1930年）製造。こちらもバケットカーとして知られ、廃線まで活躍しました。現在は、元の番号であるキホハニ56に復元され、長野県佐久市の成知公園に保存されています。
キハ101: 昭和9年（1934年）製造。片上鉄道を経て野口線にやってきました。廃線後、加古川市内の中島公園に保存されていましたが、平成20年（2008年）に解体されました。

これらの車両は、野口線の歴史を語る上で欠かせない存在と言えるでしょう。

駅と接続路線

野口線には、野口駅、藤原製作所前駅、円長寺駅、坂井駅、別府口駅、別府港駅、港口駅の7駅がありました。

接続路線としては、
野口駅：日本国有鉄道高砂線
別府口駅：山陽電気鉄道本線（別府駅）
別府港駅：別府鉄道土山線

が存在しました。

廃線後と未来への展望

野口線の廃線後、線路跡の大部分は道路に転用されました。その一部は、加古川市の遊歩道「松風こみち」として整備され、クロマツやツツジなどが植えられています。途中の駅跡は休憩所として活用されている場所もあります。

一方で、関西圏都市交通研究会は、野口線跡地を利用した野口ー別府ー土山間のLRT敷設を提案しており、過去のローカル線の復活に期待が寄せられています。

別府鉄道野口線は、短いながらも地域の生活を支え、多くの思い出を刻んできた路線でした。その歴史と魅力は、現在も人々の記憶の中に生き続けています。そして、将来的なLRT計画など、新たな展開の可能性も秘めていると言えるでしょう。

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