別式

別式（べつしき）とは

別式とは、江戸時代に諸藩の奥向き（幕府の大奥にあたる場所）で活動した女性の武芸指南役のことです。別式女、刀腰婦、帯剣女などとも呼ばれていました。

特徴的な風貌

寛政年間の出羽国の随筆『黒甜瑣語』には、当時の別式の風貌について詳しく記述されています。それによれば、大小（二刀）を差し、眉を剃り、眉墨もせず青く眉の跡が残り、着物は対丈で引き摺らない勇ましい姿だったとされています。

社会背景

こうした武家の女性が登場し活躍した背景には、当時の武家の家庭事情がありました。戦国時代には公家の女性が武家に嫁ぐことで家庭が変化する事例もありましたが、江戸時代に入り太平の世が続くと、武家の女性が柔弱になる傾向が見られました。その反動から、寛文年間頃から武士らしい女性を珍重するようになり、一種の流行となったのです。

活動内容

別式は、竹刀を使った稽古はもちろんのこと、鎌術、薙刀、馬術などの稽古も行っていました。武芸指南役として、奥向きの女性たちに武芸を教え、鍛錬を積ませていたのです。

別式がいた藩

『婦女勇義伝』という書物には、別式女がいた大名の数が記されています。それによると、仙台藩に10人、尾張藩に6人、水戸藩や長州藩に3人、姫路藩、肥後藩、薩摩藩、加州藩に4人、そして紀州藩にも別式がいたとされています。これらの藩では、別式が武芸の指導を通じて、奥向きの女性たちの精神的な支えにもなっていたと考えられます。

関連人物・事柄

佐々木累: 男装をして大小を差し、武芸を指南した女性。
婦女隊: 幕末の会津藩において自主的に武装した防衛隊。女性が武芸に携わった例。
髭櫓: 狂言の演目。武装した女性が登場する。
原采蘋: 漢詩人。旅の護身のため、男装・帯刀した。

まとめ

別式は、江戸時代の奥向きにおいて、武芸を通じて女性たちの心身を鍛え、武家の精神を伝える役割を担っていました。彼女たちの存在は、当時の武家社会における女性の役割や、武芸に対する価値観を反映していると言えるでしょう。

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