利稲

利稲（りとう）について

利稲とは、かつての日本において出挙の返済時に徴収される利息のことを指します。この制度は古代の農業社会において重要な役割を果たしており、出挙は通常、穎稲という米の一種の貸し借りを通じて行われました。つまり、利息は穎稲によって支払われていたため、利稲という名称が付けられました。

出挙の種類

出挙は大きく二つに分けられます。一つは公出挙、もう一つは私出挙です。公出挙は国司や官署が行うもので、正式に設定された制度に基づいています。一方、私出挙は現地の豪族や有力者による私的な貸し付けを指し、こちらの方が規模は小さく、より柔軟に運用されていました。後者はしばしば公的な規制の下に置かれていましたが、実際には密かに続けられることが多かったのです。

『雑令』という法令によれば、公出挙における利息の上限は5割、私出挙は10割に設定されていました。しかし、これらの上限は時代とともに変わり、天平9年（737年）に私出挙が禁止されるとともに、延暦14年（795年）には公出挙の最高利息が3割に引き下げられました。これは政府が利息の過剰徴収を防ぎ、国の財政を安定させるための施策でした。さらに、大同年間には一度5割に戻されましたが、弘仁元年（810年）には再び3割に制限され、この数値がその後の基準となりました。

財政における重要性

利稲は官司の財政収入の重要な一部となっており、これがなければ官司の運営は困難でした。出挙の機能を保つため政府は、私出挙を禁止し、公出挙の妨げを排除する努力を続けました。しかし、禁じられた私出挙が影で行われることが多く、その結果、公出挙では人頭賦課と呼ばれる強制的な貸し付けが実施されるようになりました。特に平安時代に入ると、田地の面積に応じた貸し付けが一般化し、これらは農民にとって非常に負担となるものでした。

10世紀に入ると、官司の財政は厳しくなり、出挙の元本さえも保証できない状況に陥りました。そのため、元本を貸し付けずに利稲のみを徴収する事例も現れるようになり、利稲は一種の租税として機能するようになったのです。この利稲率徴制は、出挙制度の形態に大きな影響を与え、古代日本の農業経済において重要な歴史的背景を形成しました。

参考文献

• - 森田悌「利稲」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年） ISBN 978-4-04-031700-7）

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