制空権

制空権と航空優勢の概要

制空権（せいくうけん）は、航空戦力が敵を制圧または撃破することにより、空域を支配する状態を指します。これは、敵からの妨害を受けずに陸・海・空の作戦を実行できる重要な要素です。一般に、この概念は大気圏内の戦闘に特化しており、弾道ミサイルや宇宙空間での戦闘は含まれません。

制空権の概念と分類

北大西洋条約機構（NATO）やアメリカ国防総省では、制空権は「Air supremacy」と「Air superiority」の二つの段階に分けられます。前者は敵の航空脅威を完全に排除した状態であるのに対し、後者は一時的に航空脅威を抑え、作戦を実施しやすくする状態です。日本でも、これらの段階を「制空権」と「航空優勢」としてそれぞれ定義することがありますが、現在の日本の防衛文書では「航空優勢」が主に使用されています。

制空権の歴史的背景

制空権の概念は、第一次世界大戦期に見られる航空機の登場に始まります。当時は、敵機を撃墜することで航空優勢を確保していく戦術が取られていました。第一次世界大戦中には、ドイツの飛行機が特定の地域の空中を制圧するために戦闘機を使った戦法が発展しました。1930年代には、航空撃滅を重視する戦略が確立され、航空母艦の役割も含めて空中戦が重要視されるようになりました。

イタリアの軍人ジュリオ・ドゥーエの著書『制空』によっても制空の重要性が強調され、航空戦力の攻撃的な運用が訴えられました。彼の思想は、敵の資源を破壊し勝利を収めることに重きを置いていました。この影響はその後の戦略爆撃部隊の形成にも見られます。

第二次世界大戦の制空権

第二次世界大戦では、ドイツ空軍によるバトル・オブ・ブリテンが特に有名です。この戦いでは、イギリス空軍が限られた資源でドイツ空軍に対抗し、結果的に航空優勢を取得しました。ドイツの首脳部の誤った戦略がイギリス空軍の再整備を許したため、ドイツは最終的に本土侵攻を断念せざるを得ませんでした。

現代における制空権

アメリカ空軍では、制空権の獲得を示す用語が時代と共に変化してきました。1960年代から「Air superiority」という語が主流となり、日本でも「航空優勢」が一般に使われるようになりました。現代戦では、敵の航空戦力を排除することが不可欠であり、空からの脅威を無視した作戦は成立しません。

例えば、1973年の第四次中東戦争では、イスラエル空軍が敵に対抗し、航空優勢を確保しました。最近の2022年のロシア・ウクライナ侵攻では、ロシアが初日からの航空優勢の獲得に失敗し、その結果、大きな損失を被りました。

まとめ

制空権は航空戦において不可欠な要素であり、その理解は戦争の勝敗に大きく影響を与えることがあります。歴史を通して見てみると、制空権の概念は進化し、他国との戦いにおいて明確な意味を持つようになりました。現代戦においても、航空優勢がいかに重要であるかは明白です。

もう一度検索