ジュリオ・ドゥーエ

ジュリオ・ドゥーエの生涯と戦略思想

ジュリオ・ドゥーエ（Giulio Douhet）は1869年5月30日にイタリア王国南部のカゼルタで生まれた軍人兼軍事学者であり、1930年にローマで亡くなるまで、空軍力の重要性を訴え続けた。彼の最終階級は陸軍少将であり、特に著書『制空』が広く知られている。

学歴と初期の経歴

ドゥーエはモデナ陸軍士官学校を卒業した後、砲兵士官として軍務に就いた。その後、トリノ工科大学で電気工学を学び卒業。この時期に、軍用の星型エンジンや自動車化部隊の運用に関する研究を行っていたという。1900年にはイタリア陸軍参謀本部に配属され、1909年には空軍力の運用に関する論文を発表。

戦争との関わり

1911年、イタリアがオスマン帝国に対して宣戦布告すると、ドゥーエはリビアでの爆撃に参加し、戦後には爆撃専用機の開発に着手した。彼はイタリア初の三発式爆撃機の設計に成功し、航空戦力の重要性を説いたが、1914年に第一次世界大戦が始まると、彼は航空戦力の運用をめぐって参謀本部と対立。最終的には、政府の批判を理由に一年間の禁固刑を受けることになる。

1918年に正式に現役に復帰したドゥーエは、陸軍航空局の技術部長に就任。しかし、権限不足に不満を抱き、辞職。その後、1921年に出版された彼の著書『制空』は、戦略爆撃の重要性を世界に知らしめ、多大な反響を引き起こした。

戦略思想

ドゥーエの戦略は、航空機による攻撃を重視し、地上の防御を伴うものであった。空中からの決定的な破壊攻撃を通じて、敵の物資や心理を攻撃し、早期の戦争終結を図ることを目的としていた。彼は、民間人に対する無差別爆撃の必要性を強調し、こうした戦争が長続きしないと主張した。「民間人への攻撃によって自己保存の本能を刺激し、戦争終結を求めるようになる」とする彼の理論は、当時としては非常に斬新なものだった。

ドゥーエはまた、戦略的に重要なポイントを攻撃すべきだとし、攻撃手段として高性能爆弾や焼夷弾、さらには毒ガス弾の使用を視野に入れていた。彼の理論は、空軍力の防衛・攻撃両面での活用を提唱し、地上作戦における航空優勢の重要性を唱えた。

最後の日々

1926年以降、ドゥーエは空軍次官と共に航空問題に関する啓蒙活動を行い続けたが、1930年に亡くなるまでその活動は続いた。彼の思想は、後の航空戦のあり方に多大な影響を与え、戦術・戦略の観点からも航空戦力の重要性を強調した。彼の戦略思想は、後の空軍や戦略爆撃の根幹を成すものであり、現在でもその影響は色濃く残っている。

参考文献

• - 防衛省防衛研究所戦史研究室『陸軍航空の軍備と運用〈1〉 昭和十三年初期まで 』朝雲新聞社
• - 荒井信一『空爆の歴史』岩波新書
• - 前原透監修、片岡徹也編『戦略思想家辞典』 芙蓉書房出版
• - 栗栖弘臣『安全保障概論』 ブックビジネスアソシエイツ社

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