制限戦争指導論

制限戦争指導論

ジョン・フレデリック・チャールズ・フラーによる『制限戦争指導論』は、戦争の歴史とその進行方法に関する深い考察を提供する著作です。本書は、1789年から1961年までの戦争の変遷を追い、フランス革命、産業革命、ロシア革命が戦争のスタイルや指導法にどのような影響を与えたかを検討しています。

フラーは、イングランド出身の軍事学者であり、陸軍の将校としての経験を持つ人物です。彼は戦術と機甲戦術の深化に寄与し、戦いの原則を明らかにしたことで広く知られています。本書はフラーの最後の著作として位置付けられ、無制限な戦争を避けるために守るべき基本的な指導理念を提示しています。

フラーは、絶対王政の時代から冷戦までをカバーする戦争史に基づいて、18世紀における制限戦争の概念を強調しています。当時は、敵を徹底的に排除するのではなく、機動性を駆使して敵を後退させ、外交によって問題を解決する戦争方式が用いられていました。しかし、フランス革命によってもたらされた民主主義の理念は、新たな徴兵制度を生み出し、この戦争の方式を変化させる要因となりました。

ナポレオンは、フランス革命の成果を結集し、徹底的な破壊をもって無制限の戦争概念を導入しました。フラーはこれに基づいて、ナポレオン戦争から五つの基本原則を抽出しました。それは、「攻撃を重視すること」、「時間を無駄にしないこと」、「奇襲を追求すること」、「兵力を集中させること」、「警戒を怠らないこと」です。また、戦争理論の先駆者であるクラウゼヴィッツも、同様の原則に到達していることを指摘しています。

また、18世紀の産業革命における技術革新も、戦争の運用に大きな影響を及ぼしました。蒸気機関の発明は陸海軍の機動力を向上させ、火力は発射速度と精度の向上によって洗練されました。南北戦争はその革新が顕著に表れた初の近代的な戦争と言えるでしょう。このような変化に対処するため、モルトケやフォッシュ、ブロックといった軍事指導者たちは、新たな戦争形態の作戦計画を模索しました。

フラーは、ロシア革命とソビエト連邦の戦争が、外部だけでなく内部に向けた戦争も含めた包括的な資本主義に対する戦争を意味することを指摘しています。ソ連のレーニンは、クラウゼヴィッツの戦争理論を読み込み、戦争を政治の延長とみなしました。ドイツは、戦間期の平和条約のもとで、新たな経済や軍事問題を抱え込み、ヒトラーの台頭を許すことになりました。民主主義、マルクス主義、国家社会主義の対立が高潮し、最終的に第二次世界大戦が引き起こされることになります。

この大戦の中で連合国は、あらゆる犠牲を払って枢軸国と戦いましたが、結果的には原子力兵器の開発やソ連の台頭を招くこととなりました。戦後、核エネルギーが軍事に使用されることは、戦争の性質を劇的に変化させました。全面戦争における核兵器の利用は、政治的目標と軍事的勝利の関係を根本的に問い直すものでした。

冷戦は、こうした戦争の流れの一端を表しており、西側の民主主義と東側の社会主義の理想が相いれないものであることを明確に示しました。冷戦におけるアメリカとソ連の対立は、経済戦争の様相を呈し、相手を攻撃するための手段として新たな競争が生じました。しかし、人口膨張などの要因から、ソ連は将来的には西側との和解に向かう可能性があると見られています。

このように、フラーの『制限戦争指導論』は、戦争の歴史を通じて見えてくる指導原則や背景を深く考えさせる重要な成果物であると言えるでしょう。

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