前借金

前借金とは

前借金（ぜんしゃくきん）とは、貸付金を労働の対価で返済することが条件とされる金銭消費貸借の一形態です。一般的には「まえがりきん」とも呼ばれ、一定の労働に従事しなければ全額返済が求められる性質を持ちます。

問題点

前借金には多くの問題が指摘されています。特に、未成年の子供に金銭が支払われ、その子が一定期間労働を強いられる状況は、年季奉公の形式を通じて人身売買の一形態として機能してしまうことがあります。このように見える一方で、実際には多くが住み込み労働となり、労働条件は極めて厳しいものです。

労働者は居住費や食費などが労働の対価から差し引かれるため、実質的に手元に残る金額は非常に少なくなります。また、住み込み労働では支出や収入の明確な内訳が不明確であり、労働側から見ると果たしてその対価が妥当であったのかを評価することが難しいという側面も存在します。これにより、労働搾取の疑念が高まることになります。

人権意識の向上に伴い、日本では勤労権や職業選択の自由、居住移転の自由を侵害する慣行として、法的な規制が進められています。

労働法上の位置づけ

日本の労働基準法第17条は、前借金について特別な注意を払っています。この条項では、使用者が前借金を理由に賃金と相殺することを禁じています。これは金銭貸借と労働関係を明確に分離し、金銭借入に基づく身分的な拘束を防ぐための措置です。ただし、前借金そのものが無効であるとはされていません。

前借金の無効性

一般的な労働契約とは異なり、婦女子に関する芸娼妓契約や酌婦契約は、売春の強制を伴うため、倫理的に問題視されています。すでに明治時代には、これらの契約による不当性が判例として認められていましたが、前借金に関してはさらなる検討が求められた経緯があります。例えば、前借金まで無効とすると、借金を踏み倒す親の存在を助長してしまうとの懸念もありました。

戦後の人権意識の進展により、1955年には最高裁判所が前借金と酌婦としての労働が密接不可分の関係にあることを認定し、これにより契約が無効となる可能性を示しました。この判決では、民法第90条（公序良俗）に基づき、消費貸借契約や連帯保証契約が無効とされ、既に払い込まれた金銭についても返還請求が否定される結果となりました。

まとめ

前借金は、労働者が経済的な理由から労働条件に縛られる問題を含んでいます。法律によって規制が進められる一方で、依然として様々な形でその存在は続いています。労働者の権利を守るための法制度が今後さらに整備されていくことが期待されています。

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