前奏曲、フーガと変奏曲

セザール・フランク『前奏曲、フーガと変奏曲』作品18

セザール・フランクが1860年から1862年にかけて作曲したオルガン曲『前奏曲、フーガと変奏曲』作品18は、『大オルガンのための6作品』の第3曲として知られています。この作品は、フランクがオルガニストとして活動していた時期に、サント・クロチルド聖堂の最新鋭のパイプオルガンに触発されて生まれた、彼の才能が開花した重要な作品群の一つです。作曲者自身による小オルガン（ハルモニウム）とピアノのための編曲の他、ハロルド・バウアー、イグナーツ・フリードマンらによるピアノ版も存在し、様々な楽器で演奏されています。

概要

『前奏曲、フーガと変奏曲』を含む『大オルガンのための6曲集』は、フランクが初めてその才能を明確に示した作品群として、音楽史的に重要な位置を占めています。喜歌劇『頑固な召使い』の失敗後、スランプに陥っていたフランクが、サント・クロチルド聖堂のオルガンの音色に触発され、再び作曲意欲を取り戻したことが、この作品群誕生の背景にあります。1860年に彼は念願の聖堂オルガニストに就任し、最新のオルガンの豊かな音色を念頭に置いて作曲された『6曲集』は、彼の円熟期を飾る作品となりました。矢代秋雄は、この作品を6曲の中でも最も完成された傑作と評しています。

初版は、他の作品と同様にマイアン・クヴルール社から出版され、後にデュラン社からも刊行されました。この曲は、カミーユ・サン＝サーンスに献呈されています。

演奏時間

演奏時間はおおよそ9分から11分です。

楽曲構成

この曲は、以下の3つの部分から構成されています。

1. 前奏曲
2. 序奏付きのフーガ
3. 変奏曲

前奏曲

アンダンティーノ・カンタービレ、9/8拍子、ロ短調で開始される三部形式の前奏曲です。優美で物悲しい旋律が特徴で、ロ短調を維持しながら主題が展開されます。その後、ニ短調への転調を経て、冒頭の主題が嬰ヘ短調で回帰し、静かに終結します。

フーガ

レントの序奏が9小節付いた、3/4拍子のフーガです。調的にはロ短調と嬰ヘ短調にまたがり、ストップを開放して奏でられる壮麗なコラールが印象的です。

アレグロ・マ・ノン・トロッポ、3/4拍子、ロ短調で、序奏で予告された主題に基づくフーガが展開されます。矢代秋雄は、このフーガの構成のシンプルさから、バッハ以前の時代のフーガとの関連性を指摘しています。

変奏曲

アンダンティーノ、9/8拍子、ロ短調で、16分音符によるアルペジオから開始されます。変奏曲では、この伴奏音型が持続的に奏でられ、前奏曲で扱われた主題と低音が同じ形で歌われるという、比較的シンプルな形式が用いられています。調的な扱いには前奏曲との差異が見られます。最後は弱音によるロ長調で、消え入るように終わります。

参考文献

矢代, 秋雄『最新名曲解説全集 第16巻　独奏曲 3』1981年。
楽譜 FRANCK, "PRÉLUDE, FUGUE, VARIATION", Maeyen-Couvreur, Paris

外部リンク

前奏曲、フーガと変奏曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
プレリュード、フーガと変奏曲（バウアー編） - ピティナ・ピアノ曲事典

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