前川忠夫

前川忠夫（まえかわ ただお）

プロフィール

前川忠夫は、1909年（明治42年）2月1日に香川県三豊郡上高瀬村（現在の三豊市）で生まれ、1988年（昭和63年）6月25日に亡くなった日本の政治家、農学者です。香川大学の学長や香川県知事を歴任しました。

学歴と研究活動

旧制山形高校（現在の山形大学）を経て、1935年に東京帝国大学（現在の東京大学）農学部を卒業しました。農業工学を専門とし、岩手大学教授などを務めました。1955年には香川大学農学部教授に就任し、農学部長を経て1964年に学長に就任しました。1961年には、東京大学から農学博士号を授与されました。博士論文の題目は「かんがい用貯水池の貯水能に関する研究」です。

香川県知事としての活動

1974年、日本社会党、日本共産党、民社党、公明党などの推薦を受け、香川県知事選挙に出馬し、7選を目指した金子正則氏を破り初当選。全国で7番目の革新知事となりました。多選回避や高齢を理由に、1986年に知事を引退しました。

知事在任中には、老人医療費の対象を2歳引き下げたり、国が指定していない難病の医療費を無料化するなど、県民の福祉向上に努めました。しかしその一方で、豊島事件を引き起こした責任者としても知られています。

地元選出の自由民主党の代議士であった大平正芳氏とは良好な関係を築いていましたが、1978年の前川の再選出馬時に、大平氏が自民党本部の選挙責任者である党幹事長を務めていたため、大平氏を苦しい立場に立たせました。選挙の結果、前川が当選し、自民党公認の大野功統氏（後に衆議院議員）が落選しました。この出来事は、同年の自民党総裁選において大平氏の失点となりました。

豊島問題

豊島における産業廃棄物処理場の建設に反対する住民運動が起こる中、1977年3月、県議会で産業廃棄物の種類や量などの条件を付した上で、事業許可を認めました。これに対し、住民側は同年6月、産業廃棄物処理場建設差止請求訴訟を起こしました。前川は処理場に反対する住民に対し、「これでは事業者いじめだ。豊島の海は青く、空気は綺麗だが、住民の心は灰色だ」と発言し、処分場に反対する住民を非難しました。これらの発言により、豊島と香川県との間に大きな軋轢が生じました。

1978年、前川は許可した業者に対して、ミミズ養殖への事業変更を許可しました。しかし、業者のミミズ養殖は失敗し、産業廃棄物の不法投棄が始まりました。住民は繰り返し県に陳情を行いましたが、前川はこれを取り合わず、問題は拡大の一途を辿りました。豊島事件の後処理には、2017年までに700億円以上の公費が費やされましたが、前川は政治的、道義的な責任を取ることなく、その結末を見届けることなく亡くなりました。彼の死後、香川県民からは「名誉県民を取り消すべき」という意見も出ました。

死去

1988年、肺癌による呼吸不全のため死去しました。

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