前橋スナック銃乱射事件

前橋スナック銃乱射事件とは

2003年1月25日、群馬県前橋市の住宅街にあるスナックで、住吉会幸平一家Y会組員による銃乱射事件が発生しました。この事件は、対立する暴力団組長を標的としたものでしたが、一般市民3名を含む4名が死亡、標的の組長を含む2名が重傷を負うという、一般市民が暴力団抗争に巻き込まれて死亡する初の事件となりました。

この事件の背景には、2002年2月に日本医科大附属病院の集中治療室でY会幹部が銃殺された日医大事件がありました。本稿では、この二つの事件を中心に、暴力団抗争の激化と、それによって引き起こされた悲劇について詳細に記述します。

事件の概要

この事件は、2001年8月に東京都葛飾区で発生した稲川会組員による住吉会幹部射殺事件への報復として、住吉会幸平一家Y会によって計画・実行されました。

稲川会は事件後、幹部の処分、大前田一家の解散、そして射殺を指示したとされる総長と組長の絶縁処分を行うことで、住吉会との手打ちを成立させました。しかし、Y会はこれに納得せず、手打ち後も絶縁処分された元組長らを付け狙いました。

Y会は会長の指示のもと、2002年2月から3月にかけて元組長の自宅を襲撃。2月25日には、襲撃に失敗したY会幹部が入院していた病院で、口封じのために射殺するという事件（日医大事件）を起こしました。その後、Y会は標的を元組長から、その系列の元組長へと変更し、10月にはその元組長を銃撃し重傷を負わせました。

2003年1月、Y会は元組長がよく利用する前橋市のスナックを襲撃することを計画。組員のKとYKに実行を命じました。1月25日午後11時25分頃、Kはスナック前にいた元組長のボディーガードを射殺。その後、KとYKは店内に侵入し銃を乱射、一般客3人を射殺、元組長を含む2名に重傷を負わせました。当時、店内には客8人と経営者の女性がいました。

事件の首謀者である会長と、実行役のKとYKは、その後の裁判で死刑判決が確定しましたが、会長は2020年1月に東京拘置所で自殺しました。

事件の経過

2001年8月18日、稲川会系組員が住吉会幹部を射殺。稲川会は手打ちを成立させましたが、Y会はこれを受け入れず、報復を開始しました。

2002年2月21日、元組長の自宅が銃撃され、その数日後、襲撃に関わったY会幹部が入院先の病院で射殺されます。3月1日には、元組長宅に火炎瓶が投げ込まれました。この頃、Y会内部では、斎場事件は元組長の指示によるものという話が広まり、報復の標的は元組長に変更されました。

10月14日、元組長が銃撃され重傷を負います。その後、Y会は元組長がキャバクラにいるという情報を得て襲撃を計画しますが、失敗に終わります。

2003年1月、Y会は元組長がよく利用するスナックを襲撃することを計画。1月25日、実行役のKとYKはスナックに押し入り、店内で銃を乱射、一般客を巻き込む惨劇となりました。

事件後、Y会幹部が出頭し、拳銃が発見されましたが、実行犯については曖昧な供述を繰り返しました。その後、捜査が進み、7月にはY会会長が逮捕されます。逃亡していたKも逮捕され、2004年2月には、スナックに落ちていた眼鏡からKのDNAが検出されたことで、Kは事件への関与を認めました。

裁判

日医大事件では、実行犯の1人に懲役16年、もう1人に無期懲役が言い渡されました。前橋スナック銃乱射事件では、KとYKに死刑判決が言い渡されました。裁判では、Kの自白が事件の全容解明に繋がったとされましたが、自首とは認められませんでした。

Y会会長にも死刑判決が言い渡されましたが、弁護側は無罪を主張。裁判所は、会長が事件を具体的に指示した首謀者であると認定し、犯行を「一種の無差別テロ」と非難しました。最高裁判所は、K、YK、会長の死刑判決を支持し、死刑が確定しました。

民事訴訟

事件の被害者遺族は、Y会会長、K、YK、住吉会総裁などを相手取り、損害賠償を求めました。裁判所は、会長とYKに約8200万円の支払いを命じました。

Y会会長の「余罪」告白と死

死刑確定後の2014年から2015年にかけて、Y会会長は過去の殺人事件を2件告白しました。しかし、公判では一転して関与を否定。裁判所は、会長の告白は死刑執行の引き延ばしが目的であると判断し、無罪判決を言い渡しました。

2020年1月26日、Y会会長は東京拘置所内で自殺しました。

まとめ

前橋スナック銃乱射事件は、暴力団抗争が一般市民を巻き込んだ悲惨な事件でした。事件の背景には、組織間の報復感情や、暴力団の非合法な活動が深く関わっており、その根絶の難しさを改めて示しました。この事件は、暴力団の抗争がいかに社会に深刻な影響を与えるかを示す教訓として、記憶されるべきでしょう。

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