前田亜紀 (ディレクター)

前田 亜紀（まえだ あき）は、1976年に生まれた日本の映像作家です。ドキュメンタリー映画の監督やプロデューサーとして活動するほか、テレビ番組のディレクターも務めています。

大分県別府市出身で、大分県立別府羽室台高等学校を卒業後、2000年に東京学芸大学を修了しました。映画への強い関心から映像業界を志し、2001年にテレビ番組制作会社であるテレビマンユニオンに契約スタッフとして加わります。

2009年にフリーランスとして独立。ディレクターとしてNHKの『ETV特集』や『新日本風土記スペシャル』、MBSの『情熱大陸』、フジテレビの『ザ・ノンフィクション』や『NONFIX』といった著名なドキュメンタリー番組の制作に携わりました。しかし、フリーランスとしての活動は経済的に厳しく、一時はハローワークに通うことも検討するほど追い詰められます。その状況を脱するきっかけとなったのは、手掛けていた作品が評価されたことでした。この評価を受け、2014年にドキュメンタリー製作会社ネツゲンに入社します。当時の自身のキャリアについて、前田氏は「上の世代の女性が開拓した道があり、女性であることで仕事を得る機会もあった」と述べています。ネツゲンでは、『NHKスペシャル』の「6男4女 サーカス家族の夏」や『映像の世紀プレミアム』の「グレートファミリー／運命の3つの都」といった大型番組も担当しました。

映画製作にも積極的に関与します。2016年5月公開の大島新監督作『園子温という生きもの』でプロデューサーを務めた後、同年11月には自身初の監督作品となるドキュメンタリー映画『カレーライスを一から作る』を発表しました。この作品は、探検家・関野吉晴氏が武蔵野美術大学で行うユニークなゼミ活動に密着したもので、後にポプラ社から書籍としても刊行されました。

2018年には、信友直子監督作で、母親の認知症と向き合う家族を描いたドキュメンタリー『ぼけますから、よろしくお願いします。』に、大島新氏らとともにプロデューサーとして参加。この作品は異例のロングランヒットを記録し、観客動員20万人を超える成功を収め、文化庁映画賞や文化記録映画大賞など多くの賞を受賞しました。

近年の活動では、政治をテーマにしたドキュメンタリー映画のプロデュース（共同含む）を多数手掛けています。衆議院議員・小川淳也氏を追った『なぜ君は総理大臣になれないのか』（2020年）、その続編で対立候補陣営も描いた『香川1区』（2021年）、さらにラッパーのダースレイダー氏とお笑い芸人のプチ鹿島氏を追った選挙取材ドキュメンタリー『劇場版 センキョナンデス』（2023年2月）とその続編『シン・ちむどんどん』（2023年8月）など、ネツゲンの大島新氏らとチームを組み、話題作を次々と生み出しています。

『香川1区』ではプロデューサーと兼任で撮影も担当しており、高松市での街頭演説中に撮影を妨害される出来事がありました。陣営関係者から威圧的な言動を受けながらもカメラを回し続け、この取材妨害の様子は作品にも収録されています。

2023年には、ジャーナリストの畠山理仁氏に密着したフジテレビ『NONFIX』枠のドキュメンタリー『NO 選挙，NO LIFE』で撮影とディレクターを務め、同年11月にはその映画版も公開しました。また、同年9月公開のドキュメンタリー映画『国葬の日』では企画立案に関わりプロデューサーを務めています。

監督作には『カレーライスを一から作る』（2016年）、『NO 選挙，NO LIFE』（2023年）があり、プロデュース作には前述の作品に加え、『園子温という生きもの』（2016年）、『ぼけますから、よろしくお願いします。』（2018年）、『うんこと死体の復権』（2024年）などがあります。テレビドキュメンタリーでは『ETV特集』『情熱大陸』『ザ・ノンフィクション』などの有名番組に携わっています。

著書として、監督作に関連した『カレーライスを一から作る 関野吉晴ゼミ』（ポプラ社、2017年）があります。多岐にわたる活動を通じて、日本のドキュメンタリー界で重要な役割を果たしている映像作家です。

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