前田利幹

前田 利幹（まえだ としつよ）の生涯

前田利幹は、越中富山藩の第9代藩主として知られる歴史上の人物である。彼は1771年11月28日に、加賀大聖寺藩の第5代藩主・前田利道の八男として江戸で生まれた。利幹の家族は、藩におけるその後の地位を形成する上で重要な役割を果たした。利幹の家督は享和元年（1801年）に、前任の第8代藩主・前田利謙が亡くなった後、彼の幼い次男・利保が2歳のため、利謙の養子として受け継ぐこととなった。

財政再建の試み

利幹の治世中、越中富山藩は深刻な財政危機に直面していた。彼は藩財政の再建に向けて、有力な町人たちと共に新田開発を進め、享和2年（1802年）には恵民倉の設立や商品作物の導入を試みた。しかし、この商品作物の導入は物価の高騰を招き、農民たちから反発を受けることになった。実際、文化10年（1813年）には百姓一揆が発生し、藩政はさらなる危機に直面した。

また、天保2年（1831年）に発生した富山大火と、それに続く財政難解消のための銭札発行が金融恐慌を引き起こし、藩の財政状況はますます悪化の一途をたどった。

改革五か年計画

そうした中で、天保4年（1833年）に利幹は藩財政再建のための五か年計画を発表した。彼は、大阪から財政専門家の石田小右衛門を招き、藩の改革を指導させることにした。小右衛門の入国は民衆に歓迎され、藩内は一大ムーヴメントが形成された。しかし、財政改革の施策が実施されるも、改善はほとんど見られなかった。

毎年入国して指導を行った小右衛門も思うように効果を上げることができず、民衆の熱狂は次第に冷めていった。藩の財政はさらなる困難に直面し、利幹は追い込まれることとなる。

隠居と死

彼は天保6年（1835年）10月19日、再建目標の5年を待たずに病気を理由に養子の利保に家督を譲り隠居した。利幹は1836年7月20日に66歳で死去。新たに藩主となった利保は小右衛門に指導を依頼したが、他藩との関係が忙しく、断られる結果となった。

系譜と家族

前田利幹の家族は、彼の出生から後の藩主としての役割において重要な存在であった。父は前田利保、母は喜勢（井上氏）、養父は前田利謙であった。彼には正室となる前田勝子、継室の庸や何人かの側室がいた。利幹の子どもたちの中には、後に他の藩へ養子に出される者も多く、藩の未来に大きな影響を与えた。

特に、次男の松平近信や多数の女子たちは、後の歴史においても重要な役割を果たしている。また、利幹の死後、藩は新しいリーダーシップの下でさらなる試練を迎えることとなった。利幹の治世は、典型的な「悲劇的なリーダーシップ」の一例として語り継がれている。

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