前田利直

前田 利直（まえだ としなお）

前田利直は、江戸時代中期に活躍した大名で、加賀大聖寺藩の第3代藩主です。彼の人物像を知るためには、まずその生涯を辿る必要があります。

生い立ちと初期の経歴

利直は寛文12年（1672年）6月25日に、前田利明を父に、母は本多忠義の娘である勢幾、慈眼院の間に生まれました。若い頃から将軍・徳川綱吉との関わりを持ち、貞享元年（1684年）に初めて徳川将軍家に御目見えを果たします。この際から綱吉の寵愛を受けることとなり、政治的な地位を確固たるものとしました。

元禄4年（1691年）には、外様大名でありながらも特例的に奥詰に任じられ、扱いは譜代大名と同様となります。これにより、より大きな権力と責任を担うこととなり、次の年には父・利明の死去を受けて、藩主としての位を継ぎました。その際、弟の利昌には1万石を分与し、大聖寺新田藩として独立させました。

藩主としての実績と困難

藩主としての立場はありながらも、利直は江戸に滞在し続ける傾向があり、藩の実権は家臣たちが握っていました。これは藩政を揺るがす要因となり、実力派の家臣同士の対立は次第に激化していきます。江戸藩邸の焼失などにより藩財政も大きな打撃を受け、藩内の政治は混乱期に突入しました。

宝永6年（1709年）、綱吉の死が利直にとってさらなる逆境をもたらします。奥詰の地位から解任され、また弟の利昌が他の藩主を刺殺して切腹という悲惨な事態が発生し、新田藩も改易されるという不幸が続きました。このような逆境の中、利直は精神的に疲弊し、宝永7年（1710年）12月13日に生涯を閉じることになります。

家族と後継

利直の死後は養嗣子である利章が藩主を継ぎました。家系においては、正室は酒井忠義の娘である霊台院であり、彼との間に複数の子女が生まれました。特に、富貴は前田利與の正室として名を馳せ、須和は松平清方の正室に、富紀は前田利興の正室となるなど、血筋を広げていきます。

利直の生涯は、権力の闘争や藩政の混乱、家族とのつながりなど、さまざまな要素が絡み合っており、波乱万丈なものとして記憶されています。彼の存在は、江戸時代の政治状況や大名家の生き様を知る上で、重要な一部分を形成しています。

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