前田富士男

前田富士男：西洋近代美術史研究の第一人者

前田富士男氏は、日本の美術史研究において重要な役割を果たしてきた著名な学者です。慶應義塾大学名誉教授の肩書きを持ち、西洋近代美術史、ゲーテの自然科学、そして芸術学を専門としています。神奈川県出身の前田氏は、慶應義塾大学で工学部、文学部と学び、大学院では美学美術史学専攻を修了しています。

輝かしい経歴と多岐にわたる活動

学術研究への貢献は多岐に渡ります。神奈川県立近代美術館での学芸員としての経験や、ドイツ・ボン大学への留学を経て、北里大学、そして慶應義塾大学で教鞭を執りました。慶應義塾大学では教授としてだけでなく、アート・センター所長も務め、日本学術会議会員としての活動や大学評価・学位授与機構運営委員としての活動など、教育・研究機関の運営にも深く関わってきました。

慶應義塾大学を退職後は、中部大学で教授や研究所所長を務め、文部科学省の独立行政法人評価委員会にも参加するなど、その活動は大学や研究機関の枠を超えて広がっています。現在もDNP文化振興財団の評議員として活躍されています。

豊富な著作物：多角的な視点からの美術史研究

前田氏の研究成果は数多くの著書、翻訳、そして展覧会監修という形で結実しています。単著・共著を含め、西洋近代美術、特に表現主義やパウル・クレーに関する研究は高く評価されています。

主な著書には以下のようなものがあります。

『モダン・アートの冒険　名画への旅23』（共著）
『パウル・クレー　朝日美術館西洋篇2』（編著）
『表現主義と社会派　世界美術大全集26』（共著）
『ヨーゼフ・ボイス』（編著）
『伝統と象徴－美術史のマトリックス』（編著）
『パウル・クレー 絵画のたくらみ』（共著）
『心の探究者としてのパウル・クレー Paul Klee als Seelenforscher』（編著／日欧語版）
『パウル・クレー 造形の宇宙』
『色彩からみる近代美術　ゲーテより現代へ』（編著）
『わが内なる神秘のスペイン　グノーシスを描く大西甲二』（共著）

これらの著作は、西洋近代美術史のみならず、ゲーテの自然科学や哲学、日本の近代美術など、幅広い分野を網羅しています。単に美術作品を解説するだけでなく、社会状況や哲学的背景を踏まえた多角的な視点から美術史を考察している点が特徴です。

さらに、ゲーテの著作の翻訳にも携わっており、『ゲーテ 色彩論・完訳版』など、美術史研究に重要な一次資料の日本語への翻訳を通して、日本の美術史研究の発展にも貢献しています。

展覧会監修：美術史研究の社会への還元

前田氏は、数々の展覧会の監修にも携わっています。特に、『慶應義塾創立150年記念 未来をひらく福澤諭吉』展は、第6回ゲスナー賞を受賞しており、その高い評価を物語っています。これらの活動は、美術史研究の成果を社会に還元する上で重要な役割を果たしているといえるでしょう。

まとめ：多方面にわたる貢献

前田富士男氏は、美術史学者として、教育者として、そして研究者として、多方面で卓越した活動を続けてきました。その業績は、日本の美術史研究に大きな足跡を残しており、今後の美術史研究の発展にも大きく貢献していくことでしょう。 その多様な活動と豊富な著作物を通して、美術史への深い理解と、学問への情熱を垣間見ることができます。

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