前町 (神戸市)

神戸市中央区前町：歴史と現状

神戸市中央区に位置する前町は、旧居留地西南部に存在する、非常に狭い町名です。その範囲はわずか一つの街区に限定され、現在では新神戸NTTビルがその土地を占めています。本稿では、前町の地理、歴史、そして人口変遷について詳しく解説します。

1.地理

前町は丁目に区分されておらず、一つの道路に囲まれた区画から構成されています。全域が商業地域に指定されており、北は西町、東は播磨町、南は海岸通、西は栄町通に接しています。簡潔な形状と商業地域としての用途が、この町の特性を表しています。

2.歴史

2.1 町名の由来

前町という町名は、明治5年(1872年)に神戸外国人居留地の整備に伴い命名されました。当時、居留地内には東西5本、南北8本の道路が計画され、それぞれの通りに町名が付けられました。前町は、南から2筋目の東西の通りにあたり、道幅10.2m、長さ527.4mの道路でした。その位置から「前町」という名称が与えられたと考えられます。行政上の町名としては、明治32年(1899年)の条約改正で居留地が返還され、神戸市に編入された以降に正式に扱われるようになりました。それ以前は、「居留地～番地」という呼び名でした。

2.2 領域の変遷

当初、神戸市の町名であった前町は、昭和6年(1931年)の区制施行により神戸市生田区に、そして昭和55年(1980年)の生田区と葺合区の合併により神戸市中央区に所属するようになりました。町名制定当初は南北の通りが優先的に命名されたため、東西の通りである前町の領域は複雑な形状をしていました。昭和9年(1934年)には、一部の区域が海岸通、浪花町、明石町、京町、江戸町に編入され、現在の姿に落ち着きました。

2.3 施設の変遷

明治4年(1871年)、居留地西端の番外地には外国人公園地が設置され、翌年には貸与契約が締結されました。この公園地は明治32年(1899年)に前町公園と改称されましたが、明治36年には廃止されています。また、大正5年(1916年)にはノルウェー領事館が海岸通から前町に移転し、大正9年(1920年)には浪花町に移転しました。

3.人口統計

前町の定住人口は、平成22年(2010年)と昭和60年(1985年)の調査では0人でした。一方、大正9年(1920年)には世帯数6、人口17人、明治41年(1908年)には世帯数30、人口57人、明治34年(1901年)には戸数15、人口18人という記録が残っています。この人口の変遷は、前町の土地利用の変化や都市開発の歴史を反映していると考えられます。

4. まとめ

前町は、その狭い範囲と新神戸NTTビルという現代的な建造物、そして明治時代からの歴史的背景が混在する、独特の町です。その変遷をたどることで、神戸市の都市発展の一端を垣間見ることができます。わずか一つの街区に凝縮された歴史と現状は、神戸という都市のダイナミックな変化を象徴する存在と言えるでしょう。

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