前野忠康

前野忠康（まえの ただやす）

前野忠康は、1560年に生まれ、1600年に亡くなった安土桃山時代の武将である。彼は、黄母衣十三人や若江八人衆の一員であり、一般的には「舞兵庫」として知られている。

家系と養育

忠康の父は前野忠勝、母は豊臣秀次の宿老である前野長康の娘であると言われている。忠康は養父である長康に仕え、その下で武将としての経験を積んだ。彼が初陣を果たしたのは、永禄9年の墨俣築城の戦いとされるが、信憑性については疑問が残る。また、永禄3年に生まれたため、6歳での初陣というのは非常に早すぎるとも考えられている。

武将としての活躍

彼は豊臣秀吉（当時の名は羽柴秀吉）が播磨地方に出陣する際、前野長康軍の後方支援として兵358人を指揮した。その後も丹波国の亀山城攻めや文禄の役などに参加し、戦功を上げていった。忠康は黄母衣衆や若江八人衆の中で特に知られ、さまざまな戦闘においてその武勇が高く評価された。

秀次事件の影響

文禄3年には、秀次事件が起こり、忠康はその際に出石城にいた。彼は兄の前野自勝とともに開城を決定し、その後、藤堂高虎の下に匿われることになる。秀次事件においては、彼の家族も多くが切腹に追い込まれるなど、混乱の中での選択を強いられた。このような状況を経て、忠康は石田三成のもとに仕官し、二番家老として重用された。

関ヶ原の戦いでの役割

慶長5年の関ヶ原の戦いでは、忠康は東軍の進軍を阻むべく、兵1000を率いて合渡川の畔に陣取る。彼の指揮で戦闘は行われたが、黒田・田中連合の奇襲を受け、状況は厳しくなった。忠康は梅野村まで撤退し、その際に大垣城まで兵を指揮した。しかし、戦局は不利に転じ、忠康自身は討ち死にしたとされている。

子孫とその後

忠康の嫡男である三七郎も同じく関ヶ原の戦いにおいて命を落とした。忠康の家系は藤堂高虎によって庇護され、家臣の岡田の屋敷に暮らした。その後、忠康の甥前野自性は高虎の養女と結婚し、讃岐前野家を興すことになるが、その家系は争いによって取り潰された。讃岐前野氏は短命であったが、自性の次男は阿波徳島藩に仕官し、幕末まで続いた。

名称の由来

忠康が名乗った舞野姓は、前野家に伝わる古くからの儀式、すなわち「舞」から付けられたという。彼には「舞」という名の妻もいたとの伝説がある。

登場作品

前野忠康は司馬遼太郎の小説『関ヶ原』に登場し、また2017年に公開された映画『関ヶ原』でも役を演じた。彼の生涯は、武将としての栄光と悲劇的な結末を象徴している。

もう一度検索