前頭葉白質切截術

前頭葉白質切截術（ロボトミー）について

概要

前頭葉白質切截術、またはロボトミーは精神外科の手法の一つで、精神的障害を治療するために脳の一部を切除する手術を指します。この手法は最初にポルトガルの神経学者エガス・モニスによって提唱され、1949年には彼がノーベル生理学・医学賞を受賞しましたが、その背後には多くの議論が存在しました。

歴史的背景と実施例

1940年代から1950年代にかけて、ロボトミー手術は急速に広まりました。イギリスでは年間1000件を超える手術が行われる一方で、アメリカでは精神的疾患に苦しむ多くの患者に施術されました。特に女性患者が多かったことが特徴的で、アメリカの病院での調査では、ほぼ60%が女性だったとされています。しかし、手術後の結果は必ずしも成功したわけではなく、患者の人格や知性に著しい影響を及ぼすことが多かったのです。

術後、患者はしばしば自己認識や外部への反応性が損なわれ、感情が鈍麻することが観察されました。モーリス・パートリッジという精神科医は、ロボトミーが患者の精神的生活の複雑さを減少させることで効果が見られると指摘しました。手術によっては改善が見られるケースもありましたが、長期的には多くの場合、死亡者や深刻な後遺症を伴う結果となることが少なくありませんでした。

技術と結果

ロボトミーの手法では、前頭前野の神経線維が切断されます。この手法は神経回路に固定された異常があると考えられ、これを破壊することで精神的な症状を緩和しようと試みられました。とはいえ、この手法は多くのリスクを伴い、手術後にけいれん発作や知的機能の低下が見られる場合もありました。

さらに、1940年代の手術では約5%の平均死亡率が記録され、撤回のない障害が残る患者も多数存在しました。ある患者は手術後に満足げであった一方、他の患者は人格の大幅な変化を余儀なくされ、精神的に幼児のような状態になったとされています。

現在の評価と批判

21世紀に入ると、ロボトミーは患者の権利を軽視する結果と見なされ、ほとんどの国で非人道的な扱いとして受け入れられなくなっています。精神外科の議論は廃れつつあり、代わりに薬物療法や心理療法が注目されるようになりました。ナビゲーターとしての役割を持っていた医師たちは、ロボトミーを最終手段として考え、過去の医療の誤りとして反省する動きが広がっています。

結論

前頭葉白質切截術は、精神療法の歴史における重要な一部であり、多くの患者の預かり知らぬ治療のあり方、またそれに伴う倫理的課題を浮き彫りにしました。この手法の変遷を追うことで、医療の進歩とともに営まれる医療の人道性について再考するきっかけとなることでしょう。

この歴史的な医学的試みとその際に出現した倫理的問題は、今後の精神医療における指針になりうる貴重な教訓といえるでしょう。

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