剣 (航空機)

キ115「剣」について

キ115「剣」は、大日本帝国陸軍によって開発された特異な航空機です。この機体は、太平洋戦争の末期に特攻兵器としての役割を担うことを目的としていました。設計は中島飛行機によるもので、具体的な製造は昭和飛行機工業や艦政本部が関与していました。

名称の由来

設計者の青木邦弘によると、この機体の名称は、山下奉文大将がフィリピン防衛軍司令官として行った演説「われに剣を与えよ」に由来しています。この演説は、兵士たちに勇気を与えるものであり、「剣」という名称はその象徴的な意味を持っているのです。

設計と製造の工夫

大戦末期は資材不足が深刻な状況であり、そのためキ115では一般には手に入りにくいジュラルミンの使用を避け、鋼材や木材を用いて設計が行われました。また、非熟練工でも製作可能なようにするため、胴体の断面は楕円形ではなく真円にし、構造を簡素化しています。これにより、量産に向けた工夫が施されました。

戦争が終わるまでに105機が完成しましたが、実際の戦闘で運用されることはありませんでした。ただし、1945年3月末に実際に剣による特攻出撃が行われたという証言もあります。海軍型である「藤花」は生産されず、その運命は不明です。

発動機と設計の進行

本機には、ハ115エンジンが搭載される予定でしたが、使用されたのは倉庫にあったハ115の流用です。そのため、エンジンの選定は多くの候補が挙げられ、最終的にハ115が選ばれました。また、プロペラは隼用のものが使用され、主脚は離陸後に投棄され再利用される構造に設計されていました。

1945年1月20日に試作が開始され、3月5日には初号機が完成しました。しかし、連携して開発されていたキ87の問題から、本機の設計は影響を受けていました。

開発の背景と運用目的

特攻兵器の投入が進む日本陸軍・海軍では、資材の節約と攻撃力の向上が求められていました。キ115もこの流れに沿い、突入時に翼を切ることにより、攻撃の速さと威力を上げることを狙いました。海軍航空本部は本機を大量配備する意向を示していました。

設計思想の反論

キ115は一般的に特攻専用機と見なされていますが、青木はそれに反論しています。彼の言葉によれば、本機の設計は敵艦船や上陸用舟艇への攻撃のための高速爆撃機としての発想から生まれたものであり、特攻専用の設計ではなかったと述べています。しかし、作戦環境や実際の運用からは、多くの問題が指摘されています。

特に、主脚の緩衝不良によるバウンド現象や翼面荷重の過大さからくる操縦の不安定さなど、多くの欠陥が認められました。これに対して、高島亮一は爆撃機としての適切さを提示する一方で、本機の悪化する設計状態に対して改修が必要だと結論付けました。

現存する機体と保存状況

現在、彼の設計したキ115「剣」は、茨城県つくば市の国立科学博物館の研究施設に保存されています。分解された状態で保存されていて、その存在は一般には非公開です。定期的に行われる一般公開時には、その静かな姿を観ることができます。また、別の機体はアメリカ合衆国の国立航空宇宙博物館に保管されており、調査のために持ち帰られたものです。

性能諸元

• - 全長: 8.55 m
• - 全幅: 8.60 m
• - 全高: 3.30 m
• - 重量: 1,690 kg
• - 発動機: ハ115/栄 1基
• - 出力: 1,150馬力
• - 速度: 550 km/h（推定）
• - 行動距離: 1,200 km
• - 乗員: 1名
• - 固定武装: 無し
• - 搭載武装: 500または800 kgの爆弾1発

キ115「剣」は、戦局の逼迫を受けて設計され、多くの困難を乗り越えてきましたが、どのような目的であったのかを考えさせられる機体でもあります。

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