創氏改名

創氏改名の概要

創氏改名（そうしかいめい）は、日本の統治下にあった朝鮮において、1939年に施行された政策である。これは、朝鮮総督府が発令した制令に基づき、戸籍に残る「姓」と「本貫」を保持しつつ、新たに氏を創設し、希望者が有料で名を改名することを許可するものであった。この政策は、朝鮮人が日本式の名前を名乗ることも許されることになり、実質的に日本統治下での同化政策の一環とされている。

背景

日本による朝鮮統治が始まる前、朝鮮では庶民の住民登録が軽視されており、戸籍制度も十分に機能していなかった。1894年の甲午改革以降、日本の指導のもとで、人口把握のための戸口調査が実施されるようになり、1906年には日本人が警察顧問となり、本格的に戸口調査が開始された。この時期に初めて近代的な戸籍が整備され、朝鮮半島の人口は580万人から980万人に再評価されることとなる。1910年の日韓併合以降も、朝鮮における戸籍制度は日本の影響を受け続け、朝鮮人に対しても適用されることとなった。

創氏改名の実施

創氏改名は、1939年に施行されたが、それ以前から日本内地風の姓名を希望する朝鮮人が増えており、1911年には日本政府が改称を制限する政策を打ち出していた。これを転換する形で、創氏改名が行われたが、制度の詳細は、戸籍に従来の姓と本貫を保持しつつ、新たに氏を創設するというものであった。例えば、金や李のような姓が残され、その上に山田のような日本式の氏を付け加えることが許可された。

姓と氏の違い

創氏改名においては、「姓」と「氏」は異なる意味を持っていた。朝鮮の伝統文化では、姓は男系血統を示すものであり、結婚しても女性は夫の姓には加わらない仕組みであった。一方、氏は家族を代表する名称であり、創氏改名によって、この概念が新たに導入されたことで、従来の儒教的価値観が変質していくこととなった。これにより、朝鮮人は新しい氏名を持つこととなり、戸籍には従来の姓と新たに創設された氏の両方が記載されることになった。

手続き

創氏改名には、「設定創氏」と「法定創氏」の2つの方法があり、設定創氏は1940年2月から8月の期間に行われるものであった。この期間中、新しい氏名を自主的に届け出ることが求められ、多くの朝鮮人が日本風の氏を創設した。一方、法定創氏はこの期間中に届け出をしなかった人々に対し、従来の姓をそのまま氏とするもので、自発的ではない状況で制度が適用された。

改名

改名は強制ではなく、自発的な申請によって行われるものであった。急速に浸透したこの制度により、朝鮮人は日本名への改名を比較的容易に行うことができた。改名の手続きは、改名の申請書を提出するだけで済み、手数料が必要であった。これにもかかわらず、実際には改名を希望する人々の中でも、朝鮮名を保持したいという声も少なくなかった。

現代韓国における影響

創氏改名の影響は現在の韓国にまで及んでおり、戦後、韓国では日本名を戸籍から抹消する政策が取られた。しかし、当時の創氏改名により、朝鮮人の日本名も一時的に戸籍に残ることがあった。本名が民族名に戻ることになったが、在日韓国人は依然として日本姓名を通名として使用しているケースが多く見受けられる。

強制性の議論

創氏改名の制度が強制であったかどうかについては、国内外で議論が続いている。自発的に受け入れる者が多かったという説もあれば、実際にはさまざまな圧力が存在したという意見もある。従って、この問題は歴史的に複雑な背景を持つことがわかる。

創氏改名は、朝鮮における日本の統治政策の象徴的な側面を示しており、多くの人々のアイデンティティや文化に影響を与えた重要な出来事だった。

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